劇場公開日 2025年12月12日

「停滞した日本に華の10年を蝕まれるも生き続ける」Black Box Diaries サスペンス西島さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 停滞した日本に華の10年を蝕まれるも生き続ける

2025年12月12日
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鑑賞方法:映画館

2025年劇場鑑賞101本目 名作 80点

日本一般公開初日の一番早い時間に舞台挨拶付きで鑑賞

当方僭越ながらここ7年ほど劇場鑑賞した作品を順位付けしており、今年も"WHO?"や"揺さぶられる正義"など例年通りドキュメンタリー作品が個人的ランキング上位に躍り出るなか、年末公開待機作で一番期待していた作品である

いざ公開日が迫ってもなかなか情報が公にされず、唯一の公開館のT·ジョイPRINCE品川のwebサイトでも一向に購入情報が反映されず、突如としてチケットぴあにて公開初日から3日間各2上映の計6回分の舞台挨拶付きチケットの販売が告知され、webサイトで以降の日程が更新されないことから、3日間限定の公開なのではとあたふたしたのも今や懐かしく思えるほど凝視した2時間半であった

まず10年もの月日が経っていることに衝撃が走る、つい3年ほど前の話しだと記憶していた

勿論彼女を応援しているし、山口氏を擁護するつもりはないが、いちドキュメンタリー作品としてなるべく公平な目線で見ようと勤めたが、被害者当人が監督を勤め、彼女を中心とした10年間の一部始終を映像化しているので、事件性や作風からまず上記の様な視点で鑑賞することは難しいが、それでもジャーナリストとしてではなく監督として今作を手掛けた当人が我々観客を味方に付けようといういやらしい演出や贔屓は感じなかったし、なにより彼女の涙に嘘を感じなかった

物語冒頭に車に乗車しトンネル内を走行している時に電話で証拠がないからどうしようもないとやや高圧的にあるいは電話越しの男性が手を差し伸べたいけど力及ばず無力さにやや怒り奮闘な声にそれを受けた彼女のやるせなさ、権力にひれ伏せ闇に葬りさせられる心情を、抜けることない暗闇という暗示でトンネルの描写であったり、尽力してくれていた捜査官Aと急に音沙汰なくなり、それを後に話すに逮捕一歩手前のところで食い止められ、不可解に彼のポジションを異動させられる羽目になったと告白。目障りと思った権力者が彼の行動にストップをかけたことに彼自身尽力したい気持ち半分、組織に属する以上権力に抗えず、彼もまた彼の人生を生きないといけない苦渋の選択に、彼女もかける言葉を見つからないがかといって屈してる訳にはいかないと奮起するその構図が雑草魂じゃないけど、それを示唆する様にその会話中写し出されたのが道の脇に生い茂り雑草であったり、選挙立候補してみないかという誘いに有利に働く側面と一方で自民党が勝ったら相当戦況は悪くなると忠告を受けた中、固唾を飲んでテレビの前で当選発表を見守るも、結果は自民党の圧勝。それを受けて下っていくエレベーターの中で自分の影を見つめるようにうつむく姿も、この先が思いやられることを下っていくエレベーターの中にいる私という構図が衰退していく日本の渦中の私といわんばかりの構図など、映画として、映像としての比喩表現もちゃんと組み込まれていたのが好印象であった

この事件に至った根元は、女性の社会進出に対してその懸念を払拭する土俵がなってないことだと当方は考える

彼女のもとに送られてきた匿名のメールの言い分や物語終盤に裁判所前に出向いたアイドル気取りが!と言いはなった人の逆説もわからなくはない

報道当時もハニートラップだの冤罪だのあることないこと飛び交ってたし、前述の通り山口氏を擁護するわけではないが、もう上記の様なことだったらそれはそれで世間の風評は後を経たないだろうが、今作をみた多くの人は1.3億の慰謝料請求や控訴や記者会見での供述もどの面下げてそんな大喪なこといえるなぁと思ってしまうほどに無心で2時間鑑賞した

25歳から33歳とあえていうが女性の華の期間を沈黙することなく矢面にたって屈しなかった10年間とこれからを応援したい

サスペンス西島
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