「自分で自分を抱きしめる映画」インサイド・ヘッド2 LittleTitanさんの映画レビュー(感想・評価)
自分で自分を抱きしめる映画
1. 理性ではなく情動による支配
前作も含め本作が優れているのは、人間の行動が理性では感情に支配されていると描く事。科学者やプログラマー等、論理的思考が重要な分野の人は、自分が理性的に意思決定をしていると勘違いしがち。しかし、心理学の研究者に言わせれば、自分で認識せきる自意識はあくまで氷山の一角。海に沈んで見えない大部分の無意識は情動に支配されている。
いろんな理屈を並べて自身の振舞いを正当化したがる人もいるが、それらの理屈は寧ろ後付。何をしたくて何をしたくないかの根本は、好き嫌いレベルの情動が決めている。本作では子供ばかりでなく、両親の脳内にも理性はおらず、基礎的な感情のみが会議している。娘(ライリー)のリーダーがヨロコビ(Joy)なのに対し、父のリーダーはイカリ(anger)、母のリーダーがカナシミ(Sadness)なのも面白い。
😢
2. 感情を擬人化する違和感
ただ、感情の要素1つ1つを擬人化すると若干混乱する。擬人化すると、ヨロコビ(Joy)の中にも複数の感情があるかのうに感じられてしまう。やはり喜びは喜び、哀しみは哀しみで純粋でいた方が分かりやすい。また本作は、感情達をライリーの幸せを願う守護神のようにも描く。ただ実際は感情達もライリーの一部なのだから、自分自身を護っているだけ。それでも、終盤ライリーが陥った複雑な想い(パニック?)を感情達が輪になって抱きしめるシーンは感動的。どんな窮地でも、自分くらい自分の味方になろう。自分が自分を抱きしめてあげなくちゃ。
😠
3. エンディングソングは...
SEKAI NO OWARI「プレゼント」が悪いわけじゃない。ただ、ライリーの感情リーダーがヨロコビ(Joy)ならばやはり、いきものがかり「じょいふる」で締めて欲しいと今回も思った。竹内結子さんから交代した小清水亜美のヨロコビ(Joy)も素晴らしくハマっていたが、2016年以前の「元気の押し売り」状態のベッキーもガチハマりした気がする。
😄
4. 原題と邦題
本作の原題は"Inside Out"。直訳なら「裏っ返す」とか「裏の裏まで」等の意味。本来は見えない脳内の様子を表に出した映画という意味なのだろう。脳内がひっくり返ったように混乱するという意味もかかっていそう。因みに仏題は直訳で「Vice-versa」。
邦題の「インサイド・ヘッド」は意訳というより、響きだけ原題に似せたオリジナル。日本人には分かりやすいが、医学者なら「インサイド・ブレイン」にしたかったとは思う。
おまけに中大は「腦筋急轉彎」。直訳は「頭の体操」だそうで、邦題よりは捻りが効いている。