「祝・歴代興収トップ10! 多分製作される第3作で「love」の感情が登場?」インサイド・ヘッド2 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
祝・歴代興収トップ10! 多分製作される第3作で「love」の感情が登場?
本作については当サイトの新作評論枠に寄稿したので、そこで書ききれなかったネタをこちらでいくつか記しておきたい。
評では7月28日時点のデータで歴代12位、日本や他国での上積みを加えたら10位以内は確実と書いたが、日本公開を前にあっさりトップ10を達成してしまった。日本の興収も加算された8月5日時点での世界興収は15億5600万ドルで、今後の伸び次第では16億ドル台の9位「ライオン・キング」(2019年のフルCG作品)、8位「ジュラシック・ワールド」を抜くことも大いにあり得る。ただしその上の7位「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」は19億ドル台なので、さすがに届かないだろうか。
さて、「インサイド・ヘッド2」では新たに4つの感情たちが登場し、中でもシンパイは物語を牽引する重要なキャラクターだが、ここで触れたいのは退屈で無気力なダリィ。彼がなぜフランス語まじりで話すのかというと、英語のキャラクター名がEnnui(アンニュイ)で、仏語由来の外来語だから。英和辞書では「倦怠、退屈」などの語義が示されていて、英語圏での外来語としては18世紀半ば頃に定着したそう。もちろん日本でもアンニュイは外来語として普通に使われるが、小学生以下の子供には伝わりにくいだろうから「ダリィ」にしたのだろう。
キャラの追加に関連してもう1点。シリーズ第1作となる「インサイド・ヘッド」の開発段階の初期、感情キャラたちの候補はなんと27もあったのだとか。さすがにそんなにいっぱいあったら話がとっちらかって仕方ないということで、絞りに絞って5つになった。ライリーが高校に入学する年齢になって新たに4つの感情が芽生えたというのが第2作の前提だけれど、じゃあなんで第1作の両親の頭の中に感情キャラが5つしかいなかったの、とちょっといじわるなツッコミを入れたい。人が成長して感情が増えていくなら、大人たちには少なくとも9かそれ以上の感情キャラがいないとおかしい。もちろんそれはアニメの製作上の都合で、先に書いたようにキャラが多すぎるとごちゃごちゃしてしまうからで、2作目になってから大人の中にも感情キャラが増えているのは「嘘も方便」と認めるべきだろう。
評の最後では「間違いなくゴーサインが出るであろうシリーズ第3作で、さらに成長したライリーの転機として描かれるのは大学入学、就職、それとも恋愛・結婚だろうか」と予想した。第2作の展開にならって感情キャラたちもさらに増えるなら、先述の開発当初の27の案に含まれていた「love」が第1候補ではなかろうか。ちなみに「インサイド・ヘッド」のスピンオフで「ライリーの初デート?」という短編があるが、ここではまだ新たな感情キャラは登場していない。
あと1つ、もう本当におまけみたいな話題だけれど、シンパイが手下たちに命令するのに使う巨大スクリーンに、ヨロコビが物を投げて破壊するシーンが、アップルコンピュータの有名なCM「1984」(監督はリドリー・スコット)へのオマージュだと気づいた人も多いのではなかろうか。スティーブ・ジョブズはアップルを追放されていた時期、ルーカスフィルムのコンピュータ関連部門を買収し、社名をピクサーとした。ジョブズの後押しもあって世界初のフルCG長編アニメ映画「トイ・ストーリー」が誕生したわけで、いわばジョブズはピクサーの恩人。そんな故スティーブ・ジョブズへの変わらぬ敬愛が示されているようで感慨深かった。