「観る事に特化した作品」サイレントナイト かもしださんの映画レビュー(感想・評価)
観る事に特化した作品
ラジオのニュース、歌の歌詞、奥さんとギャングの二言、三言を除くとほぼ台詞が存在しないという「観る事」に特化した「これぞ映画」と言っても過言ではない作品でした。
説明くさい台詞や煩わしい字幕が殆どない分、映像がものを語ります。
特に目を奪われたのが庭に転がったサッカーボール。
庭の片隅で朽ち果てたボールが喪失感と絶望を一瞬で観る側に伝えてきます。
圧巻の演出です。
ジョン・ウー作品ゆえにアクションばかりに目が向いてしまいがちですが、こうした細やかな演出にも監督の手腕が発揮されてました。
他にも車を停めて家に入る前に溜め息を吐く奥さんのカットは秀逸です。
夫の現状や夫婦の関係が一発で理解できる絵となっておりました。
後半になるに連れ、アクションの比重が増えてきますが、細やかな演出は影を潜めません。
敵に隙を見せたり、肩で息をしたり、しまいには履いてしまったりと素人らしさを残した主人公の立ち回りが非常に良かったです。
観る側にも不安を与える効果となっており、人間臭さを残した点は作品の質を大いに上げていたと思います。
アクションで目を奪われたのは階段を昇っていく主人公を捉えたガン・アクション。
ワンカットに加工されたシーンは見応えが充分にあり、緊張感を伴う見事なアクション・シーンとなっておりました。
まるで拳を銃に変えた「死亡遊戯」を観ている気分になっちゃいました。
鑑賞後、台詞が存在しない分、頭の中で映像を反芻できるという至福の時を過ごせる作品となっておりますので、興味のある方は劇場に足を運ぶ事をおすすめします。
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