「【”時間旅行者そして「オーロラの彼方へ」韓国恋愛バージョン。”今作は無線で時を越えて繋がった男女二人と、その友人達の関係性を切なくもファンタジカルに描いた恋愛映画である。】」同感 時が交差する初恋 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”時間旅行者そして「オーロラの彼方へ」韓国恋愛バージョン。”今作は無線で時を越えて繋がった男女二人と、その友人達の関係性を切なくもファンタジカルに描いた恋愛映画である。】
■1999年、皆既月食の夜。大学生のキム・ヨン(ヨ・ジング)は無線機を通してキム・ムニ(チョ・イヒョン)という同じ韓国大学の大学生と交信を始める。
キム・ヨンは、同学部の気風の良いソ・ハンソル(キム・ヘユン)という後輩の女子学生に好感を持っていたが、その気持ちとは別に、キム・ムニと会って見たくなったのだ。
そして、同じ大学に通っていると知って驚き、二人は翌日大学構内で会う約束をするが、ムニは二時間待っても来なかった。一方、どしゃぶりの雨の中で待ち続けるムニの前にもヨンは現れなかったのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・作品構成は、アメリカの無線機を通して30年前の父と繋がった息子の姿を描いた「オーロラの彼方へ」からヒントを得たのではないかと思った作品である。
だが、今作では父と息子ではなく、ある男と、男が好きだった女性の娘との繋がりだったという事が再後半に明かされるのである。
そして、この物語には構成上の瑕疵が無いのである。見事である。
・キム・ヨンが、同学部の気風の良いソ・ハンソルという後輩の女子学生に好感を持っていたのに、その気持ちとは別に、キム・ムニと会って見たくなるシーンでは、”浮気もんだなあ”などと思って見ていたが、成程、そういうことかあ、である。
無自覚に、自分が好きな女の子の娘と会いたくなったという事だろう。これも、皆既月食のなせる業で有ろう。
・キム・ヨンが、キム・ムニとの交信で知った、彼女がソ・ハンソルの娘であること。そして、その父は自分ではなく親友のキム・ウンソン(ペ・イニョク)だったと知った時の落胆ぶりは、実に切ない。そうだよなあ。今好きな女の子が、自分とは結婚しない未来を知ってしまったのだから・・。
故に、キム・ヨンは些細な事で、キム・ウンソンを殴ってしまうのである。その彼を介抱するのは、ソ・ハンソルなのである。つまりは、彼は意図せずに二人のキューピッドになっていたという設定も上手いのである。
そして、キム・ヨンが飼っていた亀の存在の使い方も見事である。亀は長生きだからねえ。
・キム・ムニも、徐々に事情が分かって来て、大学のレポートの発表で”愛と夢”について、話をした後に、7年もの間友人だったオ・ヨンジ(ナ・イヌ)から、”これじゃないか!”と手渡された「時間旅行者」という本。
その作者のサイン会のシーンは、素敵だったなあ。
顔を俯けてサインをしている少し老いたキム・ヨンが差し出された本にサインをする際に”名前は?”と聞くと、”キム・ムニ・・。”と答えられて、驚いて顔を上げた時に初めて見たキム・ムニの、はにかんだ顔。
そして、キム・ヨンは彼女にメッセージを書き、握手を交わすのである。
<ラストもとても素敵で、キム・ムニは勇気をもってオ・ヨンジに告白するのである。それに応えるオ・ヨンジの姿。
更に雨の中、オ・ヨンジがキム・ムニの所に向かう時に後ろから現れた顔は見えないが、キム・ヨンが差し出した、且つて自分がキム・ウンソンに差し出した傘を渡すシーンも良かったなあ。
今作は無線で時を越えて繋がった男女二人と、その友人達の関係性を切なくもファンタジカルに描いた時を越えた恋愛映画なのである。>
■韓国映画は、最初はポリィティカル映画に嵌り「タクシー運転手 約束は時を越えて」「工作 黒金星と呼ばれた男」「1987、ある闘いの真実」「光州5・18」「南山の部長たち」そして、昨年公開の「ソウルの春」
更には並行して、ノワール映画「名もなき野良犬たちの輪舞」「アジョシ」「オールド・ボーイ」「甘い人生」「チェイサー」「アシュラ」など数えきれないほど観て来たが、恋愛映画も秀作が多いし、ホント、参りましたなのである。