サンパギータのレビュー・感想・評価
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現在の劇場公開作の中で、最もフィリピンの空気感を伝えてくれるであろう一作
フィリピンから日本にやってきたエミリア(小池樹里杏)と、彼女に心動かされた写真家志望の未来(内田裕大)の二人が、日本とフィリピンで積み重ねていく交流を描いた作品です。
物語は大きく日本(東京)パートとフィリピン(マニラ)パートの前後編に分かれていて、特に後半のフィリピンパートは、マニラの雑多だが活気あふれる街並み、人々の表情までよく伝えています。なかなか日本において、今現在のフィリピンの風景に接する機会はないため、どの描写もとても新鮮です。
未来は作中なかなかな「やらかし」をしてしまっており、通常なら完全に二人の関係はアウトなところ。演じる内田裕大も「これはちょっとないのでは……」と思いながら演技したらしいんだけど(正直だ……)、そうした戸惑いがむしろ未来の、無鉄砲だが実は何をやっていいか良く理解していないという、若手写真家にありがちな態度を説得力あるものにしています。この演技は俳優デビュー直後の今しかできないと思うので(批判じゃなくて絶賛です)、これからの長い俳優人生の財産にぜひして欲しいところ!
またエミリアを演じた小池樹里杏は本作で主演だけでなく、三室力也監督と共同監督を務めただけでなく、脚本も担当したとのこと。
共同監督の難しさからか、やや展開にぎこちない部分はあったものの、劇場公開長編映画をこの水準で作り上げた時点で十分偉業だと思います。
日本フィリピン合作映画という珍しさだけでなく、若い才能の才気煥発ぶりを堪能できた映画体験でした!
ぜひ多くの方に見て欲しい良い作品。おすすめ。
今年138本目(合計1,230本目/今月(2024年4月度)12本目)。
(前の作品 「うさぎのおやこ」→この作品「サンパギータ」→次の作品「フォロウィング」)
日本フィリピン合作ということで、日本シーンとフィリピンシーンがほぼ半々で登場します。
日本にモデル希望できた主人公エミリアと、それを受け入れる男性の未来(みき)との交流を描く映画で、序盤が日本、後半がフィリピンになります。日本で代表的なお花と言えば「桜」ですが、フィリピンではタイトル通りの名前でどこででも見ることができる「国を代表するお花」です。
この映画は表面的に現れませんが、エンディングロールについて「国際結婚おめでとう!」ということで、日本人×外国人のグループの写真が次々登場するところがあります(映画内ではエミリアたちが実際に結婚をしたかは描かれていないが。この趣旨から結婚したということかな)。こういう趣旨だったんですね。
どうしても言語の壁のある恋愛なので、いわゆるスマホ等による簡易翻訳機など最新の技術も使われていてとても良かったところです。
フィリピンに遊びに行きたくなった、そんな一作でした(ただ、映画内でも描かれるように治安が良くないところは明確にあるらしい)。
採点に関しては以下を気にしました。
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(減点0.3/エミリアが日本にきたときの配慮がやや足りない)
外国から見て、日本で就労したいという場合にはビザを取りますが、海外から見たとき「どうしたら日本に入れるか」ということが問題になるので、コンタクトを取るのは通常は外国人取次を行う行政書士であり、この意味で行政書士は「イミグレーション・ロイヤー」(移民法律家、等と訳しうる)と呼ばれます。
一方、国策として介護の受け入れ等は国として進めつつも、公的試験である日本語能力試験の「何級以上を持っていること」(今はN1~N5の5段階試験)ということがかせられるため、介護の資格で持っている方でも何でも、通常は初級日本語レベルは担保されています。
ただ、この主人公の場合はその枠の「外」ですから、日本語能力についてはN5にも達していないのではないか…と思える描写があります。これは国の制度にのっていないからというものですが(「モデル希望」だけではそんな事業はないので)、かといって取り次いだ行政書士が日本語能力について何のチェックもせず、ほぼ丸投げで日本に取り次いだというようにも見え、それもそれで無責任だなといったところです(あるいは彼女(エミリア)自体の責任ともいえるが、日本でそうした仕事を希望する場合に、明確な観光旅行と違って仕事をしに行くときには通常は行政書士経由であり、そうした行政書士は基本的に日本語教育とのつながり(日本語教室学校ほか)を持っているので、(日本語能力の低さゆえに)来日してすぐに仕事を追い出されるだの何だのといったことにならない)。
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本物っぽい
小池樹里杏さんのフィリピン人演技があまりにもリアル。ハーフとのことだが上映後の舞台挨拶で純日本人の喋りでした。鑑賞してすぐはあまり感じるものは無かったのだが、しばらくして思い出すことが多くなる。上映館があまりにも少ないのがもったいない。
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