「誰かのためになること」ディア・ファミリー rieさんの映画レビュー(感想・評価)
誰かのためになること
クリックして本文を読む
この映画は佳美の病気が軸にあるけれど、そこに焦点を当てて涙を誘う話でないことは、彼女の死が描かれないことからもわかる。嗚咽を堪えるくらい泣いたけれども、悲しい涙ばかりではなかった。そして人工心臓を作ること自体に焦点を当てた医療ドキュメンタリーでもない。
最後の方の授賞式のシーンで、宣政(父)は佳美との約束のために奔走したのであって、別に世のためという思いではないという葛藤があったのだろうと感じられる。でも、彼の奔走により多くの苦しんでいる人がたしかに救われた。その事実に宣政も救われた。それを最初はちょっと無神経だと感じた記者によって描かれるのが秀逸。こう繋がるのか、というサプライズもあった。
自分や身内のためだけでなく、誰かのためになることが、自分自身のことも救う。一度は離脱した若手医師が自分の医師免許を賭けて宣政を助け、多くの人を救うことを決意したシーンや、また別の医師が「やっと筒井さんの力になれる」と言ったシーンもよかった。彼らにも人生があり葛藤があり、かつて力になれなかったことへの後悔があって、それをやっと埋めることができ、救われたのだと思う。
いろんなことを考える映画だった。観る観点によって、涙するポイントは違うかもしれない。でも、どの角度から見ても感動すると思う。
コメントする