劇場公開日 2024年6月21日

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「人に近付くことは地雷を踏み抜くこと」ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ 昭和ヒヨコッコ砲さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人に近付くことは地雷を踏み抜くこと

2025年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

幸せ

1970年代ボストン。
アメリカでも屈指の古い都市であり、保守的な考えが強い場所。
そんな場所だからバートン校も結構締め付けの厳しい学校なんじゃないかな、と。
ベトナム戦争の爪痕も生々しい時期だけに「君たち生徒は恵まれている」という言葉も重い。

そんな中、クリスマス休暇に寄宿舎に残った変な組み合わせの3人。
お互いに親しいわけではなく、教師と生徒は敵対的と言っても良いほど険悪。

アメリカのクリスマスは、恋人と家族の違いはあるが、日本と同様に孤独感を感じやすい季節。
共に過ごす家族が”いない”という事実は、日本よりも淋しく、自尊心を損なうものなのだろう。
反目し合いながらも、クリスマス休暇を過ごす中で、クリスマスという許しと親切の季節が不器用ながら少しずつ対話を重ねさせる。
作中で教師と生徒は、時に父子、時に叔父甥と偽る。
周囲から見れば、それはそのように映るのかもしれないが、一時として彼らは教師と生徒以上の関係にはなっていない。
2人にとってはどこまで言っても嫌な教師と愚かな生徒でしかない。
しかし、対話は触れられたくない事実と明かした事情を引き出し、お互いの美徳と敬意を払うべき高潔さを見出していく。
互いの幸運を真摯に祈れる関係にまで昇華していくのは非常に尊い。

「立派ではないが、聡明である」

昭和ヒヨコッコ砲
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