「他者理解」ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ まままさんの映画レビュー(感想・評価)
他者理解
数日〜数週間の時間軸で、異なる他者との理解を深めていく
ロードムービー と相性の良いテーマだが、今回は逆に年末年始の置いてけぼり
ロードムービー は主人公たちが場所を離れて、主人公たちだけの環境に身を置く
今回は周りのみんながいなくなって、主人公たちだけになる
仲の良くない家族が理解し合うロードムービー もある
クリスマスムービーでもあるグリーンブックは黒人と白人が理解し合う
今回は3人
学生と、教師と、食堂のおばちゃん
年齢・性別・人種もばらばら
共通項としては、家族の欠如
だからこそ擬似家族のようになっていく
こういうのは大抵、仲良くなる最初が肝心
いかに視聴者側に納得できるような自然なアイスブレイクがなされるか
今回は、まさに調子に乗った学生が怪我をするシーン
学生も肩を脱臼させてカッコ悪い姿を曝け出し、助けてもらわざるを得ない
教師もそれまで怒る立場だったのに、責任問題でクビになる可能性がある
ここでの共犯関係・共助関係こそが、良い
ユーモアもあり、実際ありそうな身近な焦りなのも良い
そして教師が、学生時代の同級生に会い、見栄を張って経歴の嘘をつく
ここでも共犯となる
そして秘密を共有し、教師の過去を知る
エピソードが素朴ながらも説得力があり、何より温かい
クリスマスパーティで教師が学生に、父親のことをなじる
学生から父は死んだと(実際は統合失調症)
相手を傷つけてしまった罪悪感が、情けに変わり、最終的に愛へと変わる
それはまるで父の代わりをするかのような
ものすごい人間愛に深い物語
血縁関係にないもの同士が孤独を埋め合い、それでいて血縁関係を軽視もしない
絶妙なバランス感覚がある