「この家には秘密は無いの」コット、はじまりの夏 Mr.C.B.2さんの映画レビュー(感想・評価)
この家には秘密は無いの
先日、館の設備点検日に当たり休館で観られなかった「コット、はじまりの夏」をシネマカリテで。
父親はギャンブル好きで、牛さえ賭けで失ってしまい子沢山で生活は苦しい。
両親や姉達からも疎まれている寡黙な少女
コットが母親の出産(何人目、6人?)までの間、親族のショーンとアイリン夫婦に預けられる。(口減らし?)父親はコットを預けるとさっさとコットの衣類の入った鞄さえ降ろさずに帰ってしまう。
アイリンは優しくコットに接するが、ショーンはどことなくよそよそしい。最初は戸惑うコットも二人の優しさに触れて心を開いていく。しかし、牛舎の掃除をしている間に行方が判らなくなったコットをショーンは激しく𠮟る。それにはある理由があった。近所の葬儀の帰りに、近隣の余計なお世話のオバサンからその理由を知らされる。
母親の出産も終わり、夏休みも終わるのでコットは家に返される。相変わらずコットに冷たい空気が流れる中、帰ろうとする二人を追ってコットは走る。そして、…。
ドアの外側に固定されたカメラで室内を撮る、水面のリフレクションを利用するなどちょっと変わったアングルでのショットが見られる。派手な音楽もなく、農家の静かな生活を映し出していた。
静かな映画だった。涙のラストの後で、コットが心静かな生活を得られていたらいいな。
余談 いつも言ってる事だけど、アカデミー賞は受賞作より候補作(ノミネート候補含む)の方が心に残る作品が多い。
本作も第95回アカデミー賞国際長編映画賞候補作である。
タイトルにされたあの言葉は、なによりも彼女自身に宛てた言葉でしたね。癒えない哀しみを目の当たりにしたコットをそっと浜辺に連れ出して語るショーンの思いやりにじんときました。