「与えるだけ・受け取るだけでない相互の愛情がここにはあった。」コット、はじまりの夏 jollyjokerさんの映画レビュー(感想・評価)
与えるだけ・受け取るだけでない相互の愛情がここにはあった。
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シンプルな進行で物語に入り込みやすく、カメラは顔のアップと引きのぼかしや風景の扱いも素晴らしい。
オープニングの木々の間からこぼれる陽射しはコットの揺れ動く気持ちを表わし、風景も全体の雰囲気を盛り上げている。
実家の薄暗く寂しい食卓と比して明るい光が差し込むキンセラ家のダイニング。そこは大切に使い込まれた食器や家具に囲まれ暖かなた家の中心で、秘密ではなくよりよく生きるコツと愛情が溢れている。
労働と愛ではぐくまれた両手はコットの存在を受け入れ包んでくれる。すべてのシーンがみずみずしくまぶしくストレートにしみ込んでくる。
広々とした田舎の風景や近隣の人々の「人間らしい」暮らしの中で、自分の居場所と役割を見つけたコットは、夏の終わりに自分の家に戻ると、食べかすの残ったテーブルに気づきぞんざいな暮らしぶりを目の当たりにする。
今までと違う自分がいる。
ラストは心に強く響く。安心できる環境。大切にされていると言う実感。子どもが健やかに成長するのに必要なことがすべて描かれている。
コットは「子ども」としての、夫妻は「親」としての「生き直し」の物語だ。
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