劇場公開日 2025年11月14日

「誰のために生きるのか」港のひかり Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 誰のために生きるのか

2025年11月14日
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鑑賞方法:映画館

藤井道人監督作品なら見逃す訳にはいくまい。

舞台は北陸の寂れた港町。交通事故で両親を失い、本人も視力を失った少年、幸太を見かけた現在はカタギの漁師をしている元ヤクザの三浦。幸太一家に車をぶつけたのがヤク中のヤクザだったことを知り、罪滅ぼしのように手を差し伸べようとする。幸太の視力を回復するための手術費用を得るために組のシノギの金に手をつけ、そのまま姿をくらます。手術が成功し、長じて刑事になった幸太は三浦を探しだそうとするが……。

ヤクザだの刑事だのといった部分を取っ払っても、歳の大きく離れた二人の間の絆と、その絆を生み出す利他的な生き方を描くヒューマンドラマだ。

「他人ために生きる」と言うは易くとも、実際に三浦のように自己犠牲を払える人間は決して多くはない。しかし、そんな人間の強さは、ある人にとっては憧れの対象として映り、別の人には眩しすぎてかえって疎ましく映るのかもしれない。

劇中、様々な表情を見せる、海の上に広がる空と雲、そして光芒(こうぼう=雲の隙間から漏れる太陽の光、薄明光線とも言う)のカットが幾つも挿入される。それは暗澹たる景色だったり、一筋の光明が見える景色だったり、赤く燃える太陽だったりするのだが、そんな多様な輝き方を表象しているのだろう。

話の展開に意外性はとほとんどないのだが、人の暖かさに触れることのできる佳作だ。

ただ個人的には、決着をつけるエンディングの少し前の二人のシーンは蛇足に思えた。基本的には倉庫の中で完結して、最後に「やっと一緒に海が見られた」くらいで終わってもよかったのではないだろうか。

主演の舘ひろし、幸太の少年時代の尾上眞秀と大人になってからの眞栄⽥郷敦がそれぞれいい味を出しているのだが、脇を固めるメンバーが予想以上に豪華で驚いた。

なお、ロケ地は震災直前の能登半島だったようで、自然の力で壊される前の美しい姿が画面に収められているということだけでも価値があるかもしれない。

Tofu
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