白日青春 生きてこそのレビュー・感想・評価
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「白日不到處、青春恰自來。 苔花如米小、也學牡丹開」をググってから観よう
2023.3.19 字幕 京都シネマ
2022年の香港&シンガポール合作の映画(111分、PG12)
香港を舞台にして、不法移民と難民の衝突を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本はラウ・コックルイ
原題は『白日青春』で袁枚の詩篇『苔』の一節、英題は『The Sunny Side of the Street』で「日の当たる表通り」という意味
物語の舞台は、香港のとある街
1970年代に中国から不法入国したチェン・バクヤッ(アンソニー・ウォン)は、息子・ホン(エンディ・チョウ)の結婚式に招かれていたが、その道中でシンガポール難民のアフメド(インダージート・シン)と交通事故を起こしてしまう
なんとか手続きを終えて式に来たものの、ホンは冷ややかな目線で父を見て、バクヤッは居た堪れずに会場を途中で抜け出した
ホンは警察官として勤務し、警視(ルイ・インジョン)の娘スー・ウェン(ツァオ・ユエン)と結婚していた
一方その頃、アフメドも友人ヌマンの結婚式に招かれていて、そちらもなんとか体裁を繕うことができていた
物語は、中国からの不法入国の際に親子関係が壊れたバクヤッ親子と、シンガポールからの難民一家が描かれていて、その起点が交通事故ということになっている
不法移民だけど親族が警察なのでお咎めなしになるバクヤッと、難民申請の絡みで動きが封じられているのに感情的になって全てを失ってしまうアフマド一家を描いていく
アフマドの事故死によって、妻ファティマ(キランギート・ジル)は、息子ハッサン(サハル・ザマン)を置いてカナダへ向かうことになる
そして、ファティマはハッサンをバクヤッに託すことになる
ハッサンは父を殺した相手とは知らないのだが、元々の盗み癖と後がない状況から、警官から拳銃を奪ってしまう
これによって、バクヤッも追われる身となってしまい、どうするのかという物語になっていた
映画は、袁枚の詩篇『苔』の一節から引用され、全文は「白日不到處、青春恰自來。
苔花如米小、也學牡丹開。」というものになっている
意味は「日の当たらないところにも生命力溢れる春は訪れ、米粒のように小さな苔の花も高貴な牡丹を真似て咲く」というもので、バクヤッ(白日)とハッサンの香港名「青春」が詩篇の中にある
ハッサンは希望で、バクヤッは彼がいる場所を示していて、希望を日のあたるところに届けるのが彼の役割となっている
バクヤッがどのような気持ちでハッサンに向き合っているかは何とも言えないところがあるが、事故死させたことに対する贖罪であると思う
彼は人生の道程において、もう先がないのだが、その最後の瞬間の光をハッサンのために使おうと考える
それは同時に息子の心を砕く結果になってしまい、ひとつの別れというものが描かれていく切ないものになっていたように感じた
いずれにせよ、本作の本懐を知るためにタイトルの由来である詩篇を知っている方がよく、しかも主要人物の名前に使われていることも知っておいた方が良いだろう
映画の冒頭、人物が登場する段階でそれがわかるようになっているが、集中していないと見逃してしまうかもしれない
白日はそれだけで「日が当たる」という意味になり、青春はそれだけで「春」という意味を帯びている
これだけを見ると物凄く明るくて優しい物語になりそうだが、本編はどちらかと言えばダークである
詩篇には「不」という言葉があって、それをどのようにして無くすかという物語になっているので、この「不」というものが物語の何にあたるのかを考えることが有意義であるように思えた
救われたのは誰か
孤独なタクシー運転手、アル中で息子との関係もギクシャクしていた。荒れた生活の中でおこしてしまった交通事故により1人の不法滞在の男が死んだ。事故の原因も完全に自分の保身のため。
けれど、亡くなった男の家族をみて自分のしでかしたことの大きさを知るのだ。1人でグレているだけなら誰にも迷惑はかからないが、自分のせいで不幸になる家族を目の当たりにして、助けようと動き出す。
その家の男の子は,たくましく生きていたけれど,当たり前のように悪い組織のに使われていた。救い出し,外国に送り出すまでの過程で,彼は人としての心を取り戻していく。少年を救っているようで,救われたのは彼だ。
話はここで終わるけれど、彼はこのあと,自分の息子や過去と向き合っていくだろう。身体はお酒でボロボロになっているけれど、豊かな最後になると思った。
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