「ぎょっとするようなキービジュアルで鑑賞に二の足を踏むにはもったいない一作」梟 フクロウ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
ぎょっとするようなキービジュアルで鑑賞に二の足を踏むにはもったいない一作
李氏朝鮮時代の政争を扱ったドラマ…、という内容以前に、名作ホラー映画『オペラ座 血の喝采』(1987)を連想するようなキービジュアルが強烈な作品です。しかし本編でこの場面は一瞬しか出てこないし、ホラー要素もかなり弱め(「ない」とは言わないけど)。「うわっ、怖そう(痛そう)…」という第一印象で鑑賞を見送ってしまうとちょっともったいないかも。というのも、本作は宮廷の政争を扱ったドラマとしても、盲目の主人公が限られた時間内で危機を潜り抜けていくタイムサスペンス劇としても、十分に楽しめる内容に仕上がっているためです。
物語の主筋は、17世紀の史実に基づいているため、その帰結は明らか…、というか冒頭でいきなり作中の重要人物の命運がわかっちゃうんで、「すでにゴールがわかっている物語の過程をなぞっていく」形で鑑賞を進めていくことになります。
しかし主人公は無名の鍼灸師で、しかも盲目のギョンス(リュ・ジョンヨル)であるため、ギョンスが降りかかる危機にどう対処していくのか、ギョンスと同様観客も手探り状態で状況に放り込まれた感覚を味わいます。ある程度帰結はわかっていても、サスペンスとしての緊張感は決して緩みません。
じゃあ鑑賞中は緊張しっぱなしかというと、特に前半部はちょっと滑り気味のギャグも含んでいて、劇場で笑いが起きるほどでした。こうした緩急の使い分けが実に見事な作品でもあります。
韓国の宮廷ドラマといえば壮麗な王宮やきらびやかな衣装の印象が強いですが、本作は夜陰に沈む御殿やかがり火に浮かび上がる貴族など、独特の映像美があり、それもまた本作を楽しむポイントとなっています。
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