「闇に隠れる真実と、闇に浮かび上がる真実」梟 フクロウ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
闇に隠れる真実と、闇に浮かび上がる真実
2024.2.15 字幕 アップリンク京都
2022年の韓国映画(118分、G)
李氏朝鮮時代に起きた世子暗殺事件を描いたスリラー映画
監督はアン・テジン
脚本はヒョン・ギュリ&アン・テジン
物語は、『仁祖実録』に収録されている世子殺害事件を紐解く流れになっていて、その事件の目撃者とされた盲目の鍼灸師ギョンス(リュ・ジョンヨル)の視点で描かれていく
明の衰退を受けて、今後の舵をどう切るべきかに悩む朝鮮王国が舞台となり、1645年6月27日に起きた出来事であることが明示されて始まる
ギョンスには病弱の弟キョンジェ(キム・ドウォン)がいて、ふたりは慎ましやかな生活を送っていた
目が見えないことを良いことに隠れた不幸に苛まれているものの、兄弟の仲は睦まじかった
ある日、仁祖(ユ・ヘジン)の御医であるヒョンイク(チェ・ムソン)が町にやってきた
この度、宮廷内での御医を募っているとのことで、試験を行うとのことだった
ギョンスは試験官が足を引き摺っている事に気づき、荒い息づかいから「卒中」ではないかと疑いをかける
ヒョンスクはギョンスの能力を見定め、彼を宮廷に招き入れる事に決めた
その後ギョンスは、案内役を買って出たマンシク(パク・ミョンフン)とともに宮廷に出向き、そこで見習いとして働き始める
不慣れな中、仁祖の昭容(アン・ウンジン)の診察を任されたギョンスは、そこでも能力を見せ、次第に信頼を得て行った
ある時、清から仁祖の息子・ソヒョン世子(キム・ソンチョル)が帰ってくる事になった
ソヒョンは清王(アン・セホ)とともに戻り、清国との国交を持つことが朝鮮にとって有意義だと考えていた
だが、明との関係を重視する仁祖はそれを拒み、清王の出迎えを拒否してしまう
領相(チョ・ソンハ)は出迎えをしないのなら職を辞すと覚悟を見せ、仁祖は仕方なくソヒョンと清王を出迎える事になったのである
映画は、朝鮮国内が明派と清派に分かれている対立構造を描き、明派の仁祖がソヒョン殺害を企てる様子が描かれていく
仁祖はヒョンイクに命じて、毒針を仕込ませるのだが、その様子をギョンスは目撃してしまう
ギョンスは昼間は盲目だが、夜になるとわずかに見える男で、それによってヒョンイクが使用した毒針を見つけ出し、証拠として確保する
だが、その際に蝶番に太ももをぶつけて怪我をしてしまい、ソヒョン殺害の濡れ衣を着せられてしまうのである
映画は、ギョンスの秘密を知るのがソヒョンだけという中で、どのようにしてヒョンイクが犯人であるかと伝えるか、というところを描いている
ソヒョンの妻である世子婿(チョ・ユンソ)に手紙を書くものの、黒幕が仁祖であることがわかり、口を噤まざるを得なくなる
そんな中、ソヒョンの息子ソクチョル(イ・ジュウォン)に手紙を託し、領相を動かそうと考えるのである
実録された事件をベースにして、夜目が効くという意味合いの「梟」をタイトルにしているのだが、このスリリングな展開は思わず手に汗を握る展開になっていた
夜のシーンが多く、人物の把握が難しいものの、パンフレットに記載されている8人を識別できれば問題ない
時代背景の知識などを踏まえるなら、パンフレットを購入して補完するのも良いのではないだろうか
いずれにせよ、さほど歴史の知識が必要というわけではなく、中国の属国時代の朝鮮がどの国と国交を続けるかという背景があるぐらいである
王室専属の医師と仁祖が企てたクーデターのようなもので、それを偶々盲目の男が見てしまったという構図になっている
国の存続が最優先される中で、権力闘争に明け暮れているのだが、その顛末は非常にわかりやすいので問題ないと思う
スリラー映画好きなら満足できると思うので、夜目を効かせながら、レイトショーに赴くのも良いのではないだろうか