「いつまでもあぶない刑事」帰ってきた あぶない刑事 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
いつまでもあぶない刑事
あれ、前作で“さらば”って言ってなかったっけ…?
前にも“帰ってきた(リターンズ)”ってあったような…?
関係ないね。
この二人が大人しく隠居する訳ないと誰もが知っていた。お約束で想定内。
という事で、“さらば”からの“リターンズ”。
またまた帰ってきたぜ、あぶない刑事!
これもお約束ツッコミ。
前作で定年退職。ニュージーランドで探偵始めたのに、何故に“刑事”…?
ずっと“あぶない刑事”のまんまでいいのよ。あぶない探偵=“あぶ探”とか合わない。ね、透クン。
二人が海外で大人しく探偵してる訳もない。
色々あって、探偵業剥奪されてニュージーランド出禁になって、やっぱり帰ってきたぜ、横浜!
冒頭、夜の横浜の埠頭に佇むタカ&ユージ。
歳を取っても画になる。いや、この二人だからこそ画になる。
舘ひろし&柴田恭兵!
開幕早々のお馴染みのテーマ曲と冒頭のこのシーンで、あ~これこれ。変わらぬ安心安定のあぶ刑事ワールド。
二人がハマに帰ってくる度に起きる大事件。
二人が磁石のように事件を呼び寄せるのか、事件を防ぐ為に二人が現れるのか。
二人がいた埠頭の近くで起きた殺人事件。
そこで見掛けた女を、タカは何処かで会ったような…?
謎の女・ステラ。クールビューティーな吉瀬美智子はあぶ刑事ワールドにぴったり!
彼女は二人と因縁のある中国人・フェイロンのビジネスパートナー。岸谷五朗が敵ボスかと思いきや、思わぬ黒幕が。
横浜カジノ計画を構想するベンチャー企業の若きCEO・海堂。実は二人が壊滅させた銀星会二代目会長(『もっとも』で演・柄本明)の息子。イケメンエリートは表向き、早乙女太一が二人に憎悪をたぎらす。
財政界、警察上層部と強力なパイプを持つ海堂。怪しくとも県警如きが手出し出来ない。哀れ、透課長…。
そんな時こそ、この二人。
命令無視? そもそも俺たちはもう刑事じゃねぇ。
民間人が関わるな? 知ったこっちゃないね。
昔も今も、俺たちのやり方で。
今のご時世に色々(リアリティー皆無の設定、ドンパチ、ノーヘルバイク)とコンプラ的にOUTだが、それが『あぶ刑事』。いちいちコンプラ気にして、あぶない刑事出来ねーぜ。
ハマが危険に晒されている。海堂が企む横浜テロ計画…!
ハマの危機に立ち向かえるのは、あぶない刑事だけだぜ!
これだけならいつものあぶ刑事。今回、そこにもう一つ“事件”。
二人の前に現れた一人の若い女性・彩夏。
二人に人探しを依頼。顔も知らぬ母。
彼女の母はかつて横浜のクラブで人気だった歌姫。夏子。
二人と“関係”あり。
…ん? という事は…?
二人どちらかの娘…?
娘~ッ!?
いよいよこの二人も…。
どっちの娘かはここではさておき。俺に似てる。いやいや、俺に似てる。譲らぬ親バカ(?)ぶり。
土屋太鳳もあぶ刑事ワールドにしっくり。革ジャン、バイクにまたがる姿、全力疾走、ヘルメットを取った時長い髪をなびかせる仕草、かつて母が歌ってた今は潰れたクラブでしっとりとした歌声…。
今まで以上にいい女に見えた。惚れた。ラブコメでぶりっ子やるよりこういう作品や役の方がずっといい。
性格は強気でお転婆。タカ&ユージと絶妙な掛け合い。もはやトリオムービー。
3人の親子(?)の交流。
母探しも。彩夏の母親は…?
海堂の事件に巻き込まれる。
やがて彩夏の母親探しと海堂の陰謀が交錯していき、思わぬ繋がりが…。
勿論『あぶ刑事』だから特別優れた話でもなく、暫くしたらいつもながら忘れちゃいそうだが、それでも映画シリーズの中でも真面目にストーリー作ってた気がした。
これが映画監督デビュー。6月に監督2作目(『朽ちないサクラ』)も控える原廣利。
父親はTVシリーズのディレクターを務め、親子2代で。
年齢は非公表だが、おそらく40代くらい。だとしたら、『あぶ刑事』TVシリーズのスタートとほぼ同じ。
そんな原監督や若いスタッフ。土屋太鳳、早乙女、西野七瀬ら若いキャスト。
座長の舘ひろしと柴田恭兵。お馴染みの面々、お約束事。
新旧が上手くバディ組んで。『まだまだ』『さらば』でも若い才能取り入れたが、今回は特にそれを感じた。
とは言えやはり、舘ひろしと柴田恭兵のアイドル映画。
二人の絶妙な掛け合い、関係性。彩夏がそれを“ラブ”と勘違いするが、いやいやもう、ラブを越えている。俺がアイツで、アイツが俺。名コンビ、バディをも越えた一心同体。
サングラスにスーツにコートが似合う70代はなかなか居ない。
今番宣に出る度に“カッコイイ~!”“変わらない!”と社交辞令のように言われるが、実際スクリーンで見るとやっぱりカッコイイ。本当に画になる。
クライマックスお決まりのバイク&ショットガンなんて舘ひろしのPV。
正直ちと恭サマ皺増えたなぁとか、敵との格闘で歳には勝てなかったりもするが(老いるショック!)、まだまだキメて魅せてくれる。
もはやお邪魔虫・浅野温子(初登場シーン、バレバレ…)や二人の過去映像や近藤課長の「大馬鹿者!」も聞け、トレンディな雰囲気や台詞、お馴染みの楽曲も“行くぜ!”。ファンサービスも抜かりなく。
時代錯誤? 年甲斐もなく?
これでいいんだよ、あぶ刑事は。
ステラの正体にちと無理あり。
ま、そういうツッコミ所も含めて。
彩夏の母親は…? 敢えて明かさなかった二人の“親心”が粋。
さて、どっちがお父さん…?
強いて言うなら、あの人だったのかな…?
この曖昧な感じも分かりきっていたけど、それも『あぶ刑事』。
今回、グッバイ的な演出は無かった。
この二人が永遠にグッバイする事なんてない。
さらばからのまたまたリターンズ。
まだまだもっともを目指す。フォーエバーに。
タカ&ユージ。だって二人は、
いつまでもあぶない刑事!