「UAE軍があの場所にいる背景とか、完全スルーの史実系ドンパチ映画」アンブッシュ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
UAE軍があの場所にいる背景とか、完全スルーの史実系ドンパチ映画
2024.1.4 字幕 T・JOY京都
2021年のアラブ首長国連邦&フランス合作の映画(111分、G)
イエメン内戦下にて、物資補給部隊が待ち伏せ攻撃を喰らった史実を元にした戦争映画
監督はピエール・モレル
脚本はカーティス・バーテル&ブラントン・バーテル
原題の『 Al Kameen』、英題の『Ambush』はともに「待ち伏せ」という意味
映画内の翻訳は「奇襲」
物語の舞台は2018年2月18日のイエメン南部(ロケ地はラス・アル=ハイマ)
UAE軍のアリ・アルミスマリ(マルワン・アブドゥッラ・サーリフ)、アル・ヒンダシ(ムハンマド・アフマド)、ビラル・アル・サーディ(ハリーファ・アルジャースイム)の3人は、現地民への物資補給と峡谷のパトロールを兼ねて出発した
現地民にサッカーボールなどを与えて奥深く進んだ彼らだったが、そこでテロリストの待ち伏せ攻撃に遭ってしまう
基地の司令官ジャマル・アル・カトリ大佐(マンスール・アルフィリ)は、アル・マズルーイ大佐(アブドラ・ビン・ハイダー)に救出部隊を編成させて、3人の救出に向かった
救出部隊には、1-1号車にアル・サヤリ(カリファ・アルバリ)、アブドラ・アルブローシ(ハッサン・ユセフ・アルブローシ)が乗組み、1-2号車とともに先陣を切る
だが、敵の地雷攻撃を受けて1-1号車は横転、1-2号車のサイード・アル・シェヒ(サイード・アル・シェヒ)は応援を要請する
さらにサイードは敵の対戦車砲の位置を確認するために奥に侵入し、無人機との連携を経て、場所を特定するに至った
基地から攻撃ヘリ・アパッチの出動要請がなされ、パイロット(マヒラ・アブデル・アジズ)が乗り込み、空からの迎撃を行う
だが、カトリ大佐はアパッチを失うことを避け、対戦車砲のみを破壊して帰還するように命じた
その後、マズルーイは第3部隊を編成し、現地へ救出に向かう
F-16による爆撃も発令され、救出と同時に空爆が行われることになった
マズルーイは被弾した戦車を盾にして突撃する作戦を思いつき、テロリストとの激しい銃撃戦の最中、配給部隊を確保するに至った
だが、アリ・アルミスマリはテロリストのスナイパー(タラル・アルブローシ)の手によって帰らぬ人となり、妻(ナジア・チャウドリー)たちに会うことは叶わなかった
映画は、史実ベースの攻防戦を描いていて、待ち伏せされた配給車(パトロール車)を助ける様子を描いている
基本的に動きがなく、ドンパチを繰り返すのだが、味方の絵面がほぼ同じで、主要キャラ数人以外は判別がつかない
むしろ、敵のテロリスト(オマール・ビン・ハイダー)とスナイパーの方が目立っていて、これで良いのかと思ってしまう
基本的に、部隊をこの峡谷に移しただけの戦争映画で、背景になっているイエメンの内戦の実情とか、UAE軍が参加している背景などもスルー
ヨルダン軍もパンクしてて動けないと扱いが雑で、どこまでが史実なんだろうと思ってしまう
ラストの空爆もやりすぎ感が満載で、自国の兵士を助けるためとは言え、数機全弾はフィクションにしか思えない
そういった細かいところを抜きにする映画ではあると思うが、「事実を基に」という映画なので、映画的な脚色が多すぎるのが微妙なところかもしれません
いずれにせよ、戦争ドンパチ映画が好きならOKだと思うが、実話ベースの重厚な映画を期待すると肩透かしを喰らうと思う
絶望的な状況下からの生還というところも、テロリストの動きがコミカルになっているし、ラストの天を仰ぐ演出も微妙だと思う
普通なら、アパッチが出てきた瞬間に撤退すると思うので、その後も執拗に攻撃してくる理由がわからず、武器を奪いたいとしても必要以上に弾丸を浪費しているので敵が何をしたかったのかがわからないまま終わった映画だったように思う