あんのことのレビュー・感想・評価
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現代の「不条理」
パンデミックは世界中に「不条理」を産み落とした。やりきれない事件を元に良いシナリオが、出来たと思います。
で、私が普段からその「芸風」を好まない、佐藤二朗。観客のミスリードを誘うための配役なのかはわからんが、散見される有名俳優のキャスティングに不満。時期的にたまたま、河合優美が旬の配役にはなったが、そこまで印象のない役者だったので、なかなかの衝撃。
で、何かを乗り越えてこない役なのに有名人を使われると、せっかくの「リアル」が損なわれてしまう。
入江監督のしがらみなのか、そうでないと木下もお金が出せないのか。
稲垣吾郎の芝居なんて「情」は端から持っていないしなぁ‥とか。ハイハイ、早見あかりの「はすっぱ女」ね。などと、印象を抱かせる必要はあるのだろうか。
渾身の作品も、河合の怪演も、そんなとこで「どっちらけ」。映画を楽しみたければ、普段こっちがテレビを観なければいいのかな。日本映画にそんな文句言ったらいけないの?そのうち河合優美にも「ハイハイ」とか言っちゃうのかな。頼むからCMとか出ないでね。
あれ?いい映画の感想書こうと思ったけど、文句のほうが多いなオレ‥。
本当にあった出来事に衝撃を受ける
実際に起きた事件をもとにした物語を観たり読んだときにいつも思うのは、これのどこまでがリアルでどこからがフィクションなのかということ。本作は丁寧に冒頭で実際にあった出来事を題材にしている旨の字幕が示された。その後、主人公あんの姿が描かれるのだが、本当に壮絶だった。母親から売春を強要され、シャプ漬けになる。薬から抜け出して自立しようともがくが、母親の邪魔が入る。あぁ、なんという毒親。
小学校も卒業していないから文字の読み書きも難しいってところにもなかなかの衝撃を受けた。そうなると本当にいろんなことの選択肢が狭くなるんだな。やはり日本でおきたってことが受け入れがたい。「サイタマノラッパー」のようなドキュメンタリーっぽいカメラワークも、あんの置かれた過酷な状況をよりリアルにしていた気がする。どこまでがリアルな出来事なんだろう。
でも、そんな彼女の環境を伝えることだけが目的ではない。何が善で何が悪なのかを考えさせられた。人は100%の悪人はいないし、逆もまたそう。いつも優しい人間がたまに悪いことをするときもある。当たり前のことだけど、それでいろんな歯車が狂うこともあるってこと。救われない人生もある。ただ、あんのとった行動に最後救われた気持ちにもなる。ここらへんの作りがうまかった。コロナ禍の日本を舞台としてうまく活用していたのも印象に残る。あんが絶望したときに空に見えたもの。あの光景を対極の状況を描くものとして使うなんて。かなり衝撃だった。
それにしても河合優実という俳優はどこまで大きくなっていくのだろうか。楽しみでしかない。
幸せになってくれよ
ドキュメンタリーと錯覚するような、時代を映す悲しい名作
どのような映画を「良い映画」と評価するのかというのは、難しい。
爽快な気分になる映画、泣ける映画、考えさせられる映画、生活に影響を与えるような映画…。
『あんのこと』は、楽しい映画ではない。
時には目を背けたくなるような、観たくない現実を見せられるような映画である。それでも、観なくてはいけない、観るべき映画なのだろうと思う。
河合優実という女優によって、思春期の少女の怖さや儚さ、強さや弱さ、それらがコロコロと揺れ動く様が、リアルに伝わってくる。
ふと、ドキュメンタリーかと錯覚すらする。
この物語自体、実話が元になっており、プロデューサーである國實氏が「彼女の人生を残さないと」と感じて企画がスタートしたとのこと。それを受けた入江監督が「杏の人生を生き返す」というスタンスで、できる限り順撮りで撮影しだそうです。
そのような姿勢が、私たちに、ドキュメンタリーかと錯覚させるようなリアリティを感じさせるのだろうと思います。
本当に、モデルとなった女性の、短い人生の中での辛さや苦しみ、嬉しさや希望、そんなものを丁寧に描いている作品になっていると思います。
そして、それを成し遂げた、入江監督と河合優実の功績が大きい。
また、コロナで何が起こったのか、それを後世に残すという意味においても、この映画は貴重な作品になっていると思います。
「彼女はきっと、あなたのそばにいた」
このフレーズが、心に刺さります。
映画館を出て、すれ違う人、一人ひとりが「ひょっとすると、この子が“杏”かもしれない」と思い、立ち尽くす。
社会のセーフティネットとは
いつまでも見ていたい杏ちゃん
学はないけど愛はある
学はないけど愛はある。
そんなふうに思ったあんのこと。
「あんのこと」
自分を庇ってくれた祖母を介護できたらと介護の仕事を希望し、施設の老人にもとても優しく接していたり、いきなり押しつけられるように預けられた見知らぬ人の子供も自分の子のように面倒を見たり。
とてもツラい環境で育ってきて、学もないし、常識やモラルも欠けているかも知れないけど、他人に与えられるくらいの愛はもってたのが杏という人物なのかなと。
一体どこからその優しさはやってくるのだろうか…
でもきっとその優しさや人懐っこさは環境によっては危ういものでもあるんだろうなと。
「警察の多々羅」
粗雑な感じはするけど、熱い良い人かと思いきや…うーん。
杏と同様に信頼をおいてしまっていたので、とても複雑な気持ちにさせてくる人物だった。
「幸か不幸か」
押しつけられるように見知らぬ人に預けられた子供はやとくん。
普通であればこんな迷惑な事はないが、コロナで仕事も学校も休みになってしまい、夢中になれるものがなくなってしまった状況のあんにはそれがまたひとつの夢中になれることであり、心の拠り所みたいなものになっていたのはある意味では良かったのかもしれない。
「はやとくんの母」
よくわからないというかどういうつもりだったの?というのがはやとの母。
1週間くらいで戻ってくるからってのは嘘でしょ?
でも大変だったけど児相から子供は取り戻して今は子供と一緒にいられて幸せみたいなスタンスがよくわからない…
こっちの気持ちは完全にあんに寄ってしまっているのでこの母の存在はなかなか苛立たしい。
そしてはやとくんは成長した時あんのこと少しは覚えているかな…?覚えてたら良いな…
「実家、あんの母」
とにかく悪い。嫌な印象しかない。
大抵嫌な人にも人の心があるような描写があったりするもんかなと思うけど、出てくるどの場面を取っても本当にタチが悪い。
そして切ろうとしても切れないこの繋がり。実家に戻るたびになんだか杏の積み重ねが崩されるようで、しんどかった。
「実際の出来事を元に…」
この元ってのがわかっていないけど、どのあたりが本当にあったことなんだろ?
どこが本当でもツラい話ではあるんだけど、
なかなか厳しい道であっても、働く場所であったり、学ぶ場や住む場所など、結構助けになってくれる場所なんかはあるんだなぁと思った本作(役所ではなかなかうまくいってなかったけど)
ただうまく良い人や機会に巡り会えればって話でもあるのかな…
大きく外れてしまったような人生でもやり直せるチャンスや支援なんかはある。
でもそれでも真っ当と言えるところに戻ってくるのは本人の意志だけじゃなく、それまでに出来てしまった繋がりの影響など、とても難しい事なのだろうなと…
落ちていくのはあっという間な感じ。
そしてあんのような環境で育つとそもそも、
どういうコミュニティは危ないとかの判断基準とかもズレてしまっていそうな気もする。
抜け出そうとしてても、気がつけばまた落ちていってしまう人もいる気がする。
まぁ人は弱いからなぁ…
真っ当って何よ?って気もするけど。
すぐに席を立てなかった
近所の映画館で上映していなくて、しかも内容的にどうやら心身共に元気な時、という私なりのハードルをクリアして、やっと鑑賞する事ができました。
そんな心構えをしていたのにもかかわらず、想像以上にやるせなくて館内が明るくなってもちょっと放心状態でした。
義務教育さえ受けずに親からの虐待、そして生活費のために売春までさせられる主人公のあん。そんな彼女に救いの手を差し伸べる刑事と記者との友情、立ち直ろうとした矢先のコロナ禍。
普通に生きてても人間関係が希薄になった時期ですが、彼女の支えみたいなもの全てが希薄になっていきます。とにかく切ない。
毒親に支配されてる子たちへ
貴方の親は病気だから離れて良いんだよ
貴方の人生は貴方のものだよ
辛い内容だとは薄々知ってはいたが…
やっぱり観てて辛い映画だった
前半に刑事が咥え煙草をポイ捨てする場面でこの映画は昭和か?ってムカムカしてたら、麻薬中毒更生施設で無償の善人行為?
いやいや今どきポイ捨てする奴にそんな無償の善人なんかいないか、二重人格って思って観てたらやっぱね(笑)
まあそこはともかく、最近昔の友達がシャブ中だったって聞いたこともあってあんに感情移入しすぎて辛すぎた
なりゆきでも必死に子供育て守るあんに微かな光が見えたのもつかの間、辛い結末
二度と観たくない映画だけど、見て良かった映画だった
追記
ラストは賛否両論あると思うが、観た直後は救いようのないラストだな〜って辛かったが、時間がたつにつれ辛いと言うより喪失感が押し寄せてきた
それはあんがこの先どうやって生きていくのか見届けたかった気持ちから
ある意味それは製作者の意図にすっかりハマったって言うことかも(笑)
救いのない厳しい作品だった
何ができるのか考える
実話にも注目があるといいと思う。
せつない
コロナ禍で、新聞に掲載された
1人の女性の結末の小さな記事。
どこまで脚本か解らないけど、
他人を犠牲にして欲求を満たす
主人公の母親。
他人を犠牲にして欲求を満たす
新聞記者。
他人を犠牲にして欲求を満たす
主人公に子供を押し付けた母親。
他人を犠牲にして欲求を満たす
主人公に薬を無理強いし男。
小学4年生で退学した主人公は
そこで生きるしかなかったけど、
やはり人間は希望を見出し、
立ち直り生きようとする。
しかし、他人を犠牲にして
欲求を満たす人間達、
特に主人公の母親から、
作ろうとした希望を打ち砕かれ
主人公の許容範囲を超えてしまう。
タイミング的にも
コロナパンデミックで
手を差し伸べてくれる
周りの大人達から孤立してしまう。
しかし、日本のシェルターの
秘密保持のザルさ加減。
母親は逮捕とかないのかな。
この映画をみた人達が
彼女の事を少しでも心に
思い浮かべる事があればなと
思います。
結末に近づいても、あんの幸せを祈らずにいられない思い
実話に基づいていること、そしてその中身や過程が辛く重いものである「儚い希望の日々」、それを知らなくては、そして共有しなくては、という思いを持って劇場に行きました 教育とか体験とか、そういったあたりまえに備わっているであろう物が身についていなければ、大人になってもどんなにひどい親から離れられないのであろうか
彼女が介護施設で自分を必要としてくれる人をみつけ、夜間中学や薬物依存の当事者の会で
様々な境遇の人と出会い、そして預かった子どもを自分が守らなくてはという思い、自分の存在が認められ、他の人の力になることを知ったことで、母親の虐待から解放される日々が目前にあった のにまた元に戻ってしまうことをスクリーンを観て予感をしていた
他人を警戒していた彼女が「焼肉を食べたい」と素直に言っていたあの笑顔が、彼女が輝いていたほんの一瞬だったのだろう 自死を選び、万引きをしないで自分で買ったノートを焼こうとして火をつけた後のためらい まっすぐな思いがそういう結果を生んだのですね 児相の役割とか、相談をするとか、助けを求めるとか、そういったあたりまえの「常識」だって、教育を奪われた彼女には届くことがなかった カラオケで歌う、焼肉を食べる、子どもに食事を作る、覚えた文字いっぱいのノート、つかみかけていた幸せをつかんで欲しかった
母親役の河井青葉さんは綺麗で溌溂とした役をみてきただけに、この役に彼女を起用したこと、憎い役ですが納得でした 山中アラタさん存在感ありました
(6月27日 テアトル梅田にて鑑賞)
蛇足ですが、私が本作を観た「テアトル梅田」は、3月まで同じテアトル系の「シネリーブル梅田」という名前でした 「シネリーブル」という館名は日活所有の劇場でした
東宝・東映・松竹が自前のシネコンを持っている中、同じ長い歴史を持ちながらも倒産の危機・再三の路線変更をしてきた日活が持っていたのが「シネリーブル」と「オスカー」という劇場で、リーブルの実際の運営はテアトルに委ねていたそうですが、「シネリーブル」と付いた劇場が消えるのはまた一つ日活の歴史が消え寂しく思いました 博多そして今回の梅田が消え、「シネリーブル」は池袋と神戸の2つになりました
生きづらさがひしひしと伝わる河合優実の演技
人は一人では生きていけない!?
すべて作り話であって欲しいと心から願う
ケアするものとされるもの
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