「どんな人が周りにいるかで、生き様が決まってしまうのか・・・」あんのこと ratienさんの映画レビュー(感想・評価)
どんな人が周りにいるかで、生き様が決まってしまうのか・・・
河合優実さんって、ホンっとスゴい!
彼女の魅力で、初っ端から惹き込まれ、最後まで目が離せなかった。
シャブ中で、ウリをするドン底の女性が苦悩しながら、普通の生活を手に入れようとする様を見事に見せつけてくれる。凄まじい作品で、終始、切ない思いにかられてしまった。
【ネタバレ】
人は、1人では生きていけないってよく言うけど、そうじゃないね。周りにいる人で、大いに影響されるってのを、特に感じた。
河合優実演じるあんは、寝たきりのお婆さんの面倒をみているのだが、同居する実の母親から、虐待を受けている。そればかりでなくウリまで強要され、学校にもほとんど行けていない状況だった。ある事件をきっかけに、佐藤二朗演じる刑事と出会い、更生施設で立ち直ろうとする。
普段オチャラケ満載の佐藤二朗さんですが、本作ではかなり真面目な印象を受ける。何かやってくれるんじゃないかと、期待しつつ(普通の演技でも笑えちゃうんだけど)、終始、好感の持てる刑事でした。ところが、実はパワハラ職権乱用で女性に関係を迫る一面も持っていて、そのおかげで、更生施設は機能しなくなってしまった。
介護施設で懸命に働くあんだったが、母親に居場所を突き止められ、押し掛けられるピンチにも陥ってしまう。経営者の機転により、何とかその場は収まったのだが、その後、コロナが蔓延したことにより、職を奪われてしまう。
居宅に引きこもる事となったあんは、近隣の住民から無理やり子供を預けられてしまうが、その触れ合いの中で新たな感情(使命感?母性?)が生まれ、生き甲斐を感じる。ところが、そこで偶然、母親に接触してしまい、子供を人質に、ウリを強要されてしまう。
やむなく、事を済ませて帰宅したあんだったが、そこに子供の姿は無く、再び絶望の底に突き落とされてしまった。
為すすべも無く落ち込むあんは、再びシャブに手を付けてしまう。全てに絶望し、自暴自棄となって、自らの命を絶つのだった・・・
ホンっと、健気なあんが切ない。
希望の光が見え始める度に、絶望の底へと突き落とされる。
寝たきりのお婆さんは可哀想だが、屑の母親にイライラのしっぱなし。これからって時に限って現れて、暴力で抑圧する。この母親の娘であった事が彼女の不幸であり、全てだった。
包丁を持って反撃しようとする場面もあったが、優しいあんには手を下す事も出来なかった。人を傷つけるなら自分が傷を負う。
今は亡き自分の両親が、普通の人でホンっと良かったな〜と、つくづく思い知らされた。
子供達も元気で、それぞれの家庭を持つほど円満に過ごしている。
高校を卒業して勤めた職場も、気の良い人ばかりで、仕事は大変だったが、無事定年を迎えることができた。
ご近所問題で揉めることもなく、自分はホンっと周りの人に恵まれていて、感謝しかない。
この、何もないって事こそが、幸せじゃないかと実感できる一本だった。
共感ありがとうございます。
何らかの事情で自立出来ない人は、埋もれる様に消えていきますね、こんな映画とかで取り上げられないと。コロナの時期は更にそういう人が多かったと思われ、ちょっとまだ総括出来ないですね。



