劇場公開日 2024年6月7日

「神の沈黙」あんのこと HKさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 神の沈黙

2025年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公の杏は、何度となく信じた人に裏切られ、絶望に突き落とされる。
神が沈黙しているかのようだ。

彼女はあまり直接的に感情を表に出さないし、
強い映像や音楽の演出もないのに関わらず、
ちょっとした幸せ、前向きな気持ち、絶望感などの内面が
画面を観ているこちらにひしひしと伝わってくるのがほんとうに凄い。

さらに杏の抑制された佇まいや眼差しは、
瞬間的に周りの人間の罪をすべて背負う殉教者の姿にも見え、
かつ、善と悪の同居や正義とは何か、というテーマをも含んでいるストーリーが
単なる悲劇的な物語であることを大きく超えて、高い地点に到達する表現となって、
より深い、長い、強烈な余韻を残すことに繋がっていると感じた。

杏の子供のころの母との幸せだったかもしれない関係を暗示するような、
微かな救いを提示するラストもすばらしい。

HK
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