「なかなかにエグい」あんのこと rainさんの映画レビュー(感想・評価)
なかなかにエグい
めちゃくちゃ引きずる鬱映画と聞いて、観てみた。
確かに引きずるけど、個人的には、前半シーンでただひたすらあんちゃんが母親にいじめられるシーンが1番しんどかった。おいおいこんな感じで2時間弱続くのかよと思って心が痛んだ。だからこそ、中盤、彼女の人生に希望が見出せて、少しずつ社会復帰して周りの人と打ち解けていくのが、(月並みな言葉になるが)嬉しかった。
いろいろ思うことはあるけど、タタラの逮捕、サルベージ閉鎖、失職、学校閉鎖?、ハヤトの児相行きなど、どれか一つでも彼女に残ってくれていたなら、彼女は死ななかったと思う。
一から築き上げたものが、少しずつ彼女の手からこぼれ落ちていくシーンが見ていられなかった。
だから彼女が母親の家で包丁を持ち出したとき、もうこれは母親を殺すか自殺をするか二択しかないというのは一目瞭然だったと思うが、どこまでも優しい彼女は、人を傷つけることはしないだろうというのもわかってしまった。
あと補足で、最後、ハヤトのお母さんがまるで聖母のような佇まいで、あんちゃんには感謝していますとかわけのわからんことを言ってたけど、お前が息子を預けなければ多分彼女はまだ生きてたぞと言ってやりたかった。どんだけ図々しい…。最後、彼女とハヤトの後ろ姿を見て、2人の未来もまた、輝かしいものではないだろうと思ってしまった。
私は個人的に、バッドエンドの映画はあまり好きではない。この映画は限りなくバッドエンドに近いと思うのだが、それでも役者さんたちの魅せ方、映画の構成、ストーリーなど、単純に観ていて飽きなかった。バッドエンドの映画に⭐︎4はなかなかつけないのだが、うーん、おもしろかったのでつけてしまうことにしよう。
クライマックスの悲劇を招いたのは、住所が親族にも秘匿されている杏とハヤトが住んでいるマンションを、その執念で杏の母親が見つけたことではないでしょうか。DVの被害者とかの保護施設で、住所は秘密みたいなことを、入居時のシーンで担当の女性が言っていたような。
もっともハヤトと暮らしていた杏には収入がなかったと思われるので、やがて蓄えもつき、ハヤトとの生活を維持するために売春を再開てのは、ありそう。ただハヤトは杏にとって生きるよすがだっただろうから、ハヤトと一緒に生活できる間は、少し生活が荒むにせよ、生き続けられたかも。