劇場公開日 2024年6月7日

「河合優実の実在感」あんのこと 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0河合優実の実在感

2024年6月17日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

冒頭のテロップに続き、眼の下に濃いクマを作った河合優実のアップを見ただけで、この作品の作り手たちの気迫のようなものが伝わってくる。
河合優実は、表情だけでなく、話し方、字の書き方など、仕草の一つ一つで、確かにこの少女がこの社会に存在した、という説得力を与えている。かつての女子高生イメージから、憑依型女優に進化して、本当に凄い。
佐藤二朗は、彼ならではの独特の味わい。稲垣吾郎は、本作では印象が薄いが、このところ個性派監督作品への出演が続いている。圧巻なのは、河井青葉。例えるなら、彼女も出ていた「愛しのアイリーン」での木野花のような衝撃。
この種の作品では逆に珍しいが、薬物依存症の回復支援や、夜間中学、DV被害者用シェルターなどの社会システムがちゃんと描かれているが、これは実話に即しているからだろうか。
しかし、そうした繋がりを断ち切るコロナ禍。苦境に立ったミニシアター支援のために自主映画を製作したことのある入江悠監督の、「コロナ忘れてなるものぞ」という強い思いも感じさせられた。

山の手ロック