「親ガチャにもほどがある。」あんのこと 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
親ガチャにもほどがある。
“ふてほど”で一気にブレイクした河合優実。初めて観たわけではなかったが、あのドラマの河合優実は確かに良かったので、この映画を観たくなり、場末の映画館に足を運んだ。
【物語】
香川杏(河合優実)は幼いころから虐待を受けて育ち、小学校も卒業できず、12歳の頃には母親に生活費を稼ぐために売春を強要されていた。そして17歳の頃には薬物の常習者になっていた。あるとき、連行された警察で人情深い刑事・多々羅(佐藤二朗)と出会い、更生のきっかけを掴む。
杏を生活費稼ぎの道具としか思わない母親と唯一心を寄せる年老いた祖母との生活から抜け出すことは杏にとって容易ではなかったが、多々羅と彼の友人である記者・桐野(稲垣吾郎)の支援により真っ当な仕事について、前に進み始める。
しかし、幾度となく泥沼から這い上がり、前を向こうとする杏の前にはいつも困難が立ち塞がる。
【感想】
フィクションと言われたら、「リアリティーが無い」「こんな母親いるわけない」と言ってしまうレベル。はっきり言って見ているだけで吐き気がするほど不快になった。
しかし、これは2020年に新聞記事になった実話ベースだと言うから驚く。
しかし、人間どんなに辛い境遇でも、一人でも心許せる人がいれば、辛抱する、あるいは立ち直ることが出来るものなんだど改めて思う。
杏が前を向こうとする姿に観ている方も、心底ホッとし、「これ以上彼女に悪いことは起きませんように」と願わずにはいられない。
しかし、ここまで神様は意地悪なのかと。
自分の恵まれない境遇を、社会の性にしたり、他人の性にする奴は同情する気にもならないのだが、ここまで酷い境遇で育つと、「お前が弱いんだ」とはとても言えない。
そんな過酷な人生を送る少女を河合優実が好演。不良っぽいところはふてほどと共通しているが、能天気な役だったドラマとは異なり、恵まれない境遇によって沁み込んだ陰を持ちながら、それでも希望を見つけようとする、痛々しくも強い少女が強く胸に刺さった
佐藤二朗は喜劇役者ぶりは一切見せず、優しくも怖い男を熱演。最近シリアスな役も良く見るが、上手い喜劇役者はシリアスな役も上手い。善人か悪人か分からない男を絶妙に演じている。
ちょっと観賞後に気が重くなるけれど、いつまでも強く記憶に残りそうな作品。