劇場公開日 2024年6月7日

「あんのこと」あんのこと Moiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0あんのこと

2024年6月8日
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泣ける

悲しい

感想

この映画の話は実話をもとに制作されている。認識
がなくこの事実を知り得ていなかったので、この国
で、映画の内容のような事が罷り通ってしまったと
いう事に、まず最初に驚嘆した。

この映画のテーマとなっている問題は人間が社会的
に生活する上で本当に厳しく重い意味を持つ。

日本人の家族の形態は歴史的に見ても変化し続けて
いて、50年前には当たり前であった三親等位まで
が近所に暮らして居る、大家族形態は都市部を中心
に激減。さらに人口の地方から都市部への一極集中
化による、近所に知り合いのいないひとり親家庭な
どの新形態による核家族化が、極端に進行している
状況である。

現代の日本と日本人はどうなってしまったのか。
人間同士の関わり方や、人としての在り方(家族の
在り方、子供との関わり方、親からのアタッチメ
ントを含めた幼児期からの妥当性をもった人間道徳
教育。制度、政策から考える現状の偏った社会的行
政救済システムの強化や見直しなど。)をこの映画
の状況のような事案が今後増えると思われるので、
詳細に考え直した方が良いという気持ちになった。

日頃からよく思っているのは、人は身勝手で無責任
な生き物であるという事だ。

ある一人の女性を救い続けようとしても、救われる
ことの無かった話の中で、誰が加害者で、誰が被害
者になるのであろう。

誰が悪人で罪人なのか。悪い事と知って行動する、
あんが悪いのか。ネグレクトとDVの母親が悪いの
か。それとも多々羅がどうしようもないヤツなの
か。それともマスコミの、この問題に対する人に
与える影響を考えなかった桐野が悪いのか。

全員が悪いのだ。無知、無関心、無責任、責任転嫁
自己中心主義、特に人の無関心がコロナ禍等の悪か
った年の流れと重なり、最悪の結末となってしまっ
た。

妥当性を持ち得た分別ある大人の人間が段々と少な
くなってきているのかもしれない。

真当な人として、自身に課せられた、あるいは自ら
課している社会的責任をどのように果たしていくべ
きなのか。また人としてどのように社会と関わって
いるのか。あるいは、どう関わるべきなのかを今一
度、人間一人一人が考え直し、問題と感じる場合は
時に行動してみる必要があると感じる話であり、自
分自身反省し、考えさせられた。

脚本・演出
事実をありのまま、淡々と表現することが出来てい
た。無理に感傷的になっていないつくりどころがリ
アルさを感じて良かった。◎

俳優
杏役河合さんの演技にまず眼力を感じる。浮つかず
焦りもない。諦めに近い押しの弱さで、しかし、
生きるために最後の力を振り絞って懸命に踠く姿が
健気で本当に素晴らしかった。泣いた。演技に感動
した。今、最も関心を持って観ている、期待する大
好きな実力派女優である。◎

多々羅役の佐藤さん。流石の演技。福田監督作品と
は一味も二味も違うアドリブの効いた抑えるところ
は抑えた難しい役どころを本当に上手く演じていた
。素晴らしい。◎

桐野役の稲垣さんも多々羅と反対象な感じの落ち着
いた演技で良かった。

⭐️4

Moi