「構成上の弱点を抱えながら、美しい秀作の映画に」青春18×2 君へと続く道 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
構成上の弱点を抱えながら、美しい秀作の映画に
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
この映画『青春18×2 君へと続く道』は、同じ藤井道人監督の『余命10年』と比較すると、構成上の弱点を抱えながら、しかし美しい秀作の映画に仕上がっていると思われました。
その構成上の弱点とは、『余命10年』では、主人公にまつわる話が冒頭からネタバレされ、主人公と彼氏との2人の関係性が映画が進むにつれてどんどんと凝縮されて行くのに対して、この映画『青春18×2 君へと続く道』では、ヒロインのアミ(清原果耶さん)にまつわる話が最後まで明かされないまま進み、主人公・ジミー(シュー・グァンハンさん)とヒロイン・アミとの2人の関係性がそこまで凝縮しないまま映画の最終盤まで進んでしまう点にあると思われました。
つまり、この映画『青春18×2 君へと続く道』では、ヒロイン・アミの主人公・ジミーに対する態度が、ずっと違和感があるまま映画の最終盤まで進んでしまう構成になっているのです。
それが要因となり、主人公・ジミーとヒロイン・アミとの2人の関係性は、純化の観点ではそこまで凝縮性がなかったとは思われました。
それが(もっと深い感動があるはずの題材の映画で)そこまで全体を通して深く感動させる映画にならなかった要因だとは思われました。
もちろん映画の最後での大きな感銘はあったのですが‥
しかしそれを差し引いても、ヒロイン・アミを演じた清原果耶さんは相変わらず素晴らしい演技で、主人公・ジミーを演じたシュー・グァンハンさんも過去と現在で全く雰囲気が違う的確な演技をされていて、美しい台湾と日本の風景や美術など含めて、過去の台湾と現在の日本が美しく錯綜する、内容ある秀作の映画になっているとは僭越ながら思われました。
(脇を固める台湾・日本の俳優陣も素晴らしく、特に全く違うキャラクターを他の作品でも多数演じていながら今回も自然な安心感をもたらす黒木華さんにはやはり感嘆しかないなと一方で思われました。)