「涙腺崩壊 ネタバレ注意」青春18×2 君へと続く道 はーちゃんごめんねさんの映画レビュー(感想・評価)
涙腺崩壊 ネタバレ注意
めちゃくちゃ良かったですね。映画の長さは2時間なのですが、飽きがきませんでした。これは、過去の回想の入れ方や、会話と風景描写の配分などがちょうど良かったことによると思います。あと、脚本が胃もたれしなかったことも大きい。セリフを長々と入れて全てを説明しようとするのではなく、言葉と表情、カメラワークなどの映画の技法を多角的に使い、アミやジミーの思いを表現できていました。それに加えて、映画の全体の構成も良かったですね。現在のジミーが旅をしながら、アミとの日々を思い出す、現在と過去のクロスオーバーが効果的になされていたと思います。この構成によって、18歳のジミーには見えていなかったことが36歳のジミーには見えるという対比が顕著になっていました。特に、アミという人物の陽と陰がよく表れていたと思います。18歳のジミーから見て、アミは少し大人で明るく、美しいお姉さんでした。それが36歳のジミーの旅を通じて、影の部分が見えてくるのです。この対比が、アミという人物をより愛おしくさせるのだと思います。アミは、ジミーの前では、余裕がある大人でいようとしたわけですが、その裏で必死に自らの運命に抗おうとしていたのです。その様は、熟練した大人ではなく、まだまだ未熟な20歳の女の子に過ぎなませんでした。もっといいやり方があったはずなのにと、36歳のジミーを含めて我々は思うわけですが、これが青春というものなのでしょう。せつなすぎます。
さて、こうしたアミを演じる難しさは、演技未経験の我々にもひしひしと伝わるわけでありますが、さすがの清原果耶です。お見事でした。私は、あまり映画やドラマを見ないので、今まで彼女がどんな役を演じてきたのか、全てを知ってるわけはないですが、困難を抱えた人物を演じることが多いように思います。彼女の代表作「おかえりモネ」では、気仙沼出身の被災者を、「護られなかった者たちへ」では、仙台市の生活保護課の職員を演じていました。「透明なゆりかご」では、ADHDを持つ女の子、「ファイトソング」では聴覚障害になった女の子などなど、挙げればキリがないのですが、今回もまた、困難を抱えた女の子です。しかしながら、本人もインタビューで語っていましたが、今回演じたアミは、明るく、溌剌とした人物で、清原があまり演じたことがないタイプの人物です(ただし、陰の部分はあるのですが)。私が思うに、性格が明るい女の子を演じることができる俳優はたくさんいると思います。しかし、20代で陰翳をしっかりと付けられる俳優というのは、中々いないのではないでしょうか。今まで困難を抱えた人物の演技を経験したがゆえにしっかりと人物に影を付けられる、そんな清原にしかアミは演じられない。藤井監督はそう考え、オファーを出したのではないでしょうか。私が思うに、この期待に清原はしっかりと答えられていました。清原果耶という俳優に今後とも、注目していきたいと思います。