「130分にわたるダイジェストと、かつてない神速エンドロール」シャクラ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
130分にわたるダイジェストと、かつてない神速エンドロール
2024.1.6 字幕 TOHOシネマズ二条
2023年の香港&中国合作の映画(130分、G)
原作は金庸の小説『天龍八部(1963年)』で、大幅に改変されたものという説明あり
元祐の時代にて、宋国と近隣諸国の諍いにて活躍し、とある告発にて逆賊の汚名を被せられた男を描いたアクション映画
監督はドニー・イェン
脚本はシェン・リンジー&ズー・ウェイ&ヘ・ベン&チェン・リー&シェン・リージン&シュー・イーファン
原題は『天龙八部之乔峰传』で「天龍八部の喬峯の伝説」、英題は『Sakra』で「仏教用語でトラヤストリシャの支配者の名前」という意味
物語の舞台は天祐年間(1086年〜1094年)の宋国(現在の中国)を中心とした中国大陸
そこでは、宋国が王朝を築いていたが、大理国(雲南省西部、タイ族国家)、姑蘇(江蘇省)、契丹(モンゴル高原東部、モンゴル語族)、吐蕃(チベット民の統一国家)が虎視眈々と領土拡大を狙っていた
特に宋国は契丹を忌み嫌っていて、両国の諍いは絶えなかった
宋国には丐幇と呼ばれる武人集団がいて、今は宋国に支えつつ、勢力を拡大していた
その幇主は喬峯(ドニー・イェン、幼少期:ユアン・ジンフイ、少年期:ヂャン・チシュウ)という人物で、彼は赤子の時に捨てられ、養父・喬三槐(ユー・チンフイ)と養母(ドゥアンム・イチェン)に育てられてきた
彼は少年時代を少林寺で過ごし、玄苦大師(ソウ・シピン)たちのもとで修行をし、その実力が認められ丐幇に属することになった
そして、実力を認められ、幇主へと成長を遂げるのである
映画は、義兄弟とも言える馬大元(ヤン・ホア)が何者かに殺され、その嫌疑が喬峯にかかるところから動き出す
証人として、康敏こと馬夫人(グレース・ウォン)が喬峯を犯人だと言い、しかも喬峯が契丹人であると暴露する書簡を持っていた
これを信じた丐幇のメンバーは、契丹人に幇主はさせられないと憤り、喬峯はやむなくその座を降りることになった
そして、自身の嫌疑を晴らすべく行動を開始するものの、今度は少林寺にて玄苦大師の殺害の現場に居合わせて誤解を招いてしまう
さらに、その場に「易筋経」を盗もうとする謎の女(のちに阿朱と判明、演:チェン・ユーチー)も現れ、喬峯は幾重にも誤解を招き、敵を増やしてしまう
その後、玄難大師(シ・シャントン)の秘伝を受けて瀕死の状態になった阿朱を助けるために聚賢荘に向かい、薛慕華神医(ユェン・シャンレン)の元を訪れるのだが、薛は「お前の命と引き換えならば」という条件をつけ、喬峯はそれに応じて、これまでの関係を精算することになったのである
映画は、嵌められた喬峯が自身の嫌疑を晴らそうと行動を起こすものの、かつての仲間たちと戦わなければならない状況に追い込まれていく様子が描かれていく
どう見ても、馬夫人が黒幕のように見え、彼女が丐幇の執法長老・白世鏡(ド・ユーミン)と繋がっていることも序盤でわかる流れになっていた
また、阿朱を少林寺に向かわせたのが姑蘇の慕容復(ウー・ユエ)であり、彼も背景にいることがわかる
だが、映画では、慕容復の父・慕容博(レイ・ロイ)と喬峯の実父・蕭遠山(ドニー・イェン)がラストに登場し、「俺たちの戦いはこれからだ」と言わんばかりの終わり方をしてしまう
それゆえに消化不良感が凄まじく、130分の前座を見せられた気分になってしまうのである
アクションシーンもワイヤーアクションの多用によって逆に陳腐になっていて、気功を使う技には名前が付いていて、どこかで見たことがあるような戦闘シーンになっていた
このスタッフで『ドラゴンボール』を実写化してくれたら面白いだろうなあと思える感じになっているが、リアルな戦闘とは程遠いファンタジーの世界になっているので、これを許容できるかどうかが評価の分かれ目になっているように思えた
いずれにせよ、冒頭の世界観の説明がかなり早口で、瞬間的に字幕を暗記しないと、何がどうなっているのかわからない内容になっている
登場人物もかなり多めで、展開もダイジェストのように次々と場面が展開する
エンドロールも「神速」レベルに早くて、誰が出ていたかを確認することもできない
原題でググればそこそこわかるものの、同じ原作のドラマがたくさん出てくるので、情報取得もカオスなことになっていた
ドラマだと全50話ほどあるので、本作もシリーズ化されれれば全10作ぐらいにはなってしまうのではないだろうか