劇場公開日 2024年6月14日

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「【”お前の父は他人の気持ちを考える負け組だ。他人を思いやるな、と腹黒い狐と呼ばれる金持ちの老人は僕に言った。”今作は一人の少年が、背反する生き方をする父と老人の狭間で人生を学ぶ物語である。】」オールド・フォックス 11歳の選択 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 【”お前の父は他人の気持ちを考える負け組だ。他人を思いやるな、と腹黒い狐と呼ばれる金持ちの老人は僕に言った。”今作は一人の少年が、背反する生き方をする父と老人の狭間で人生を学ぶ物語である。】

2025年10月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

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■台北郊外に優しく他人を気遣う父リャオタイライ(リウ・グァンティン)と2人で暮らすリャオジエ少年(バイ・ルンイン)。
 倹約しながら、いつか自分たちの家と亡き母と臨んだ理髪店を営むことを夢見ている。
 ある日、リャオジエは“腹黒い狐”と呼ばれる地主・シャ(アキオ・チェン)と出会う。その出会いが、リャオジエに人生は如何に生きるべきかを考えさせることになるのである。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・今作で印象的な人物は、アキオ・チェン演じる“腹黒い狐”と呼ばれる地主・シャである。
 相当に、悪い人物かと思いきや、彼は高級車を待たせて屋台でササっと飯を食べるし、母をゴミ捨て場のモノ拾いの際に破傷風で失っていたりと、貧しき出の人物だと分かって来るのである。

・この、シャが友人に苛められて、トボトボ歩くリャオジエ少年に車中から声を掛けて来た理由は、観ていればすぐに分かる。
 それは、シャにとってリャオジエ少年は、且つての自分だったからである。

・シャは、バブル時代に株、土地、絵画で儲けた人物として描かれるが、彼には絵画の良さを見分ける眼が無い。だが、リャオジエ少年の若き父リャオタイライと亡き母と、自分の母が亡くなった際に、同じ病院のエレベーターでその背中を見た際に、喜ぶ妻を制する姿を見て、”この男は、自分の悲しみを感じ、はしゃぐ妻を制したのだ。”と感じる事は出来るのである。そして、その後の苦労からその事を、リャオジエ少年に告げ”お前の父は、他人の気持ちを考える負け組だ。”と告げるのだが、その顔は何処か柔和なのである。
 それはそうであろう。彼自身がその素養を持っているのだから。

・リャオジエ少年は、父の生き方と、シャの生き方の狭間で悩み、父に反抗したりするのだが、クリスマスには父から自転車を贈って貰い、二人で夜道を笑顔で走るシーンを観ていると、父の事が大好きなのであろう。

■物語のメインストーリーには直接的には関係ないが、今作ではリャオタイライの学生時代の女友だちだったヤンジュンメイ(門脇麦)が、しばしば、リャオタイライが務めるレストランに一人で来て、沢山の御馳走を頼みながらも、殆ど手を付けずに帰るシーンが描かれる。
 彼女は、経済的に恵まれていながらも、幸せではない人生を送っている人物として描かれているのである。これは、シャの生き方を示しているとも言えるのである。

<そして、リャオジエ少年は成長し、建築家として成功している。
 観ていると、彼の生き方は、他人の気持ちを考えながら、自分の利も得るという”父の生き方と、シャの生き方”の両方を実践している事が分かるのである。
 今作は、一人の少年が背反する生き方をする父と老人の狭間で人生を学ぶ物語なのである。>

NOBU
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