劇場公開日 2024年7月12日

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「本当にやらなければならいことは何か(映画とマイナーなもの)。」ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0本当にやらなければならいことは何か(映画とマイナーなもの)。

2024年7月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2023年。ペドロ・アルモドバル監督。殺人事件を捜査する保安官を25年ぶりに訪ねて来た旧友の牧場主。かつて熱烈に愛し合った二人だったが、実は牧場主の息子が殺人の容疑者として浮かんでいた。別れた事情、25年の歳月、そして法の裁きが絡んで、素直になれない二人はどうなるのか、という話。
三人が銃を向け合う緊迫した場面で、牧場主は息子を脅して逃がし、そして保安官を撃つ(そして怪我の手当と介護をする)という選択をする。「血縁」を優先してただ息子を助け保安官を裏切るのではなく、「法」や「愛」に従って保安官に味方して息子を裏切るのでもない。血縁や法や愛はいかに重要だとしても自分の思うままにはならないものであり、人生において「本当にやらなければならないこと」ではない。本当にやらなければならないことは、関係をつくること、それを続ける方策を模索することなのだ。ということらしい。
西部劇の同性愛といえばきわめて不自然なもので、タブーとして扱われているものはたくさんあるが、本作ではきわめて自然な愛情として描かれている。映画が観客にマイナーなものへの感情移入を促し、新たな知覚を与えてくれるものだということを再認識した。

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