「誇るべきことでも卑下することでもない」小学校 それは小さな社会 jfs2019さんの映画レビュー(感想・評価)
誇るべきことでも卑下することでもない
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「6歳児は世界のどこでも同じようだけれど、12歳になる頃には、日本の子どもは“日本人”になっている」は秀逸なコピーだ。
日本は経済規模の割には公教育にお金を出さない国で、公財政教育支出対GDP比はOECD加盟国の中で下から2番目だ。生徒が教室の掃除をしたり、給食の配膳をしたりするのはひとえに金をかけないからであって、生活指導も学校の機能だからというのは国の言い訳に過ぎない。たびたび批判にさらされる、枠にはめたがる画一的な教育も、そこに思想があるというよりも、枠にはめて一律に扱う方が教員の数を少なく抑えられ金がかからないからである。多様性を受け入れるにはコストがかかるのだ。精神論に偏りがちなのもそうだ。要するに「みんなビンボが悪いんや」ということなのだが、結果として、集団性や協調性が身につくと海外から評価されてるというのはなんともこそばゆい。卑下することはないが、決して誇るべきことでもないような気がする。
ただ、教育システムが画一的でも、限られた予算の中で教員たちは悩みながらも連携してよい教育を提供しようと奮闘しているのが画面から伝わってくる。結果、子供の個性はちゃんと様々に伸びる。同じ教育を受けてきただろう教員たちがそれぞれに個性豊かなのが何よりの証拠だ。シンバルの彼女が力不足だったのは入学後から1年間近く見ていた教師は最初からわかっていただろう。それでも、本人の希望に沿ってあえて役を与え、責任感を自覚させ、最後には自信をつけ、やり遂げさせるというのは教育の力としか言いようがない。
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