「儚く、切なく、蒼く、そして残虐。」ゴールド・ボーイ luna33さんの映画レビュー(感想・評価)
儚く、切なく、蒼く、そして残虐。
前評判が良かったので早速鑑賞。期待を裏切らないどころかその上を行ってくれましたね。
サイコパス同士の駆け引きでスリリングな展開が続き、最後の最後まで目を離せなかった。細かい粗が無いわけじゃないけど物語が破綻することもなく二転三転しながら怒涛のラストを迎える…。最後は思わず「太陽がいっぱい」を観た時の気持ちを思い出した。すごく余韻が残る終わり方で良かったと思う。
役者陣も素晴らしく良かったです。
岡田将生は「ドライブ・マイ・カー」でも思いましたが、冷めた感じ、少し狂ってる感じが特に上手いですよね。
また今作において3人の子供達こそがまさにこの映画の主役と言って良い。それぞれの役割をしっかり全うしていたと思うし、演技が初々しいのも10代のみずみずしさという表現において大いにプラスに働いたんじゃないかな。朝陽が徐々に見せる凄まじいほどの狂気、夏月の儚くて切ない輝き、浩の小物感たっぷりのおバカなチンピラぶり。どれも実に良かった。特に夏月の純粋さには感情を激しく揺さぶられました。(観客の多くがそうだったんじゃないかと思う)
そしてもう1人、個人的に一番ハマったのが黒木華かも。あれほど溺愛して守り続けた最愛の息子とやっと安心して暮らせると思った矢先、息子が人殺しだと知った時の彼女の絶望感…。息子はあろうことか母親にも刃を向け、その躊躇のなさに恐れつつ泣きながら取り乱して命乞いをする母親。母親目線で見ると、果たしてこれ以上の地獄ってあるんだろうか?すごく重く刺さりました。黒木華さん、本当に上手かった。
原作が中国だからなのか、全体的にどことなく異国情緒が漂っていて、物語も画的にもあまり日本っぽくなかった印象です。まあそのために沖縄を舞台にした、という事なのかな。それも結果的にすごく良かったと思います。
一番シンプルに言えば、ラーメン二郎を食べた気分ですかね(笑)