「犯行動機が二人を翻弄する」ゴールド・ボーイ ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
犯行動機が二人を翻弄する
全国47都道府県の中で
沖縄県の離婚率は断トツで一位との統計。
であれば、本作での主要な三組の登場人物すべての背景に
離婚(と、再婚)が横たわっていても納得がいこうというもの。
原作は『紫金陳(ズー・ジェンチン』による小説〔坏小孩(悪童たち)〕。
本国ではドラマ化され大人気をはくしたと聞く。
それを監督の『金子修介』、脚本の『港岳彦』が
沖縄を舞台に移植したのだが、これが大成功。
先に挙げた納得感のある理由と共に、
米軍基地が密集する中で血縁と利権に絡め取られる人々の閉塞感も
併せて描かれる。
『金子修介』について言えば、
デビュー作の〔宇能鴻一郎の濡れて打つ(1984年)〕は傑作。
が、それ以降は本数を撮るも目立った作品は
〔1999年の夏休み(1988年)〕
〔ばかもの(2010年)〕
くらいか。
アイドルや少女漫画との相性はすこぶる良いものの、
弾けきれずにいた感。
それが本作では理詰めの{クライムサスペンス}を
130分の尺を使い濃密に語っている。
とは言え、十四歳の『星乃あんな』の使い方は相変わらず上手く、
これだけは多くの作品に一貫して評価できる点。
加えて、本作での『松井玲奈』の目の演技も特筆できる点。
義理の両親を崖の上から突き落とし
財産を手に入れようと画策した『東昇(岡田将生)』を
たまたま犯行現場を目撃した三人の少年少女が脅迫。
そこから二転三転の心理合戦の始まりで、
緻密に寝られた構成は最後まで破綻することなく疾走。
騙し騙されの先読みがくるくると展開され緊張感も持続する。
中途、知恵をめぐらせ合う主要な二人の人物の性格的な異様さも露わになり、
観ている側は怖気をふるう。
とりわけ連続殺人の動機が
金なのか人間関係なのかがその二人の対比の妙。
が、金だけでは人は着いて来ず、最後まで孤独。
片や熱愛的に味方をする人物が現れ成否を分ける。
もっとも、最後の最期で痛いしっぺ返しを喰らうのも、
その愛情故というのはなんとも皮肉が利いている。
『星乃あんな』の出来の良さに比して
『羽村仁成』は〔リボルバー・リリー〕の頃から
さほどの成長は見えず。
邦画界における少年を演じる俳優の払底を思い知らされる。