劇場公開日 2025年1月17日

「引きずる思い出」君の忘れ方 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5引きずる思い出

2025年1月22日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

難しい

幸せ

おいおいおい...お目当てが...。
西野七瀬目当てで行ったのに、速攻ではけていった。悲しい。悲しすぎる。このポスターでこれはずるい。騙されちゃうよ誰でも。坂東龍太カッコイイし演技上手いけど、流石に2時間は絵が持たん...。こういうテーマだからやり方は間違ってないと思うんだけど、もう少し構成や演出で上手いことできたんじゃないかなと思っちゃう。
ただまあ、お涙頂戴展開に持っていてなかったのは好印象。この手の映画にしては珍しく、スムーズな話運びで飽きることは無かった。退屈そうな映画だけど、退屈はしない。絶妙なバランス。なんか不思議。

大切な人を失った人たちのお話。
メインの男3人。三者三様、それぞれ先立たれた彼女や妻に対してどんな思いを抱いているのか、どんな考えの元生きているのか。この辺の人物背景がものすごくよく描けていて、意外にもちょっと感動しちゃう。死に向き合いながら生きることの難しさ。もしも...と考えるだけで結構苦しくなる。
特に岡田義徳演じる池内という人物がすごく考えさせられて。死を受け入れず、生きているものとして捉える行為には色んなことを思わせる。幸せに見えるけど、不幸せのようにも見える。彼を見ていると、死をしっかり受け入れている人以上に喪失感で溢れていて、心がぐちゃぐちゃになる。

正解のない問いとはまさにこのこと。
それぞれの価値観や考え方があって、生き方がある。否定したり治そうとしたりして、周りがとやかく言うことでは無い。特に愛する人の「死」を目の当たりにした人に対して無闇に背中を押すような言葉はかけられない。
津田寛治演じる牛丸さんの言葉が心に残っている。森下(坂東龍太)が「天国にいる人は生きている人の悲しんでいる姿を見たくないんじゃないんですか?」という問いに対して、「でももし森下さんがいま亡くなったとして、家族や周りの人が悲しんでいなかったらそれもちょっと悲しくないですか?」と牛丸さんが答える。ほんとそう。悲しむことは決して悪いことでない。彼のこんな言葉こそ、勇気づけられると思った。

映画的な面を話すと、かなり地味で湿っぽい雰囲気だから役者やセリフ以外で印象に残るものは少なく、津田・岡田・南果歩のおかげでかろうじて見ていられるものの、脚本だけで評価するとちょっと薄く微妙だなと。頼りっきりになっちゃっている。幽霊の召還という要素も最初は良かったけど、終盤になるとあんまり意味を成しておらず、少しの会話で消滅しちゃったのが勿体ない。もっとしつこくて良かった。
構成としても割とずっと同じことの繰り返しで、誰かしらと話す→過去に浸る→カレー食べる→現れるの反復作業で飽きはしなくとも見応えは無い。起承転結のバランスが悪いように思えた。

決して酷いとかそういうのではないし、テーマとそのテーマに対する解答は素晴らしかったと思う。なかなか言葉にしにくいことを上手に言葉にしていて、なんだか心が浄化されたような気持ちになれた。
ただ、フワーっとしていて捉えようがないし、テーマの割には重みがなくて心に響きずらく、演出と空気感のミスが作品全体に影響及ぼしてるなと思った。ちょい残念。でも嫌いじゃない。ラストの3人の会話とかめちゃくちゃ良かった。いいシーン多いだけに惜しいね。

サプライズ