「自分だったらと考えながら観てしまった」君の忘れ方 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
自分だったらと考えながら観てしまった
大切な人を亡くす経験は誰しもが避けて通れない。ただ、長期間治療していた病気や老衰といった理由の死と、事故や事件に巻き込まれた死、そして突然の病死は別物と言える。後者は自分も経験がない。結婚を控えていた恋人を事故で亡くした男性が主人公となる本作を観て、自分だったらどうするだろうかと考えてしまった。そんなことを考えた人は多いと思う。
最初に恋人・美紀が亡くなったことがわかるシーンや、亡くなる前のエピソードをほとんど出さない(見せるのは幸せそうな写真だけ)のはとてもさりげないのに切なくさせるいい演出だった。序盤ですでに泣きそうになってしまった。美紀を演じた西野七瀬にほとんどセリフがないことも驚いた。たしかにこれもアリだ。
残された者にしたら、初めの頃は慰めや励ましの言葉をかけられても全く響かないだろうし、そんな他人の心づかいも鬱陶しいと感じるかもしれない。ほっといてくれと。だから主人公の昴の気持ちに共感できる。それでも何かを求めてグリーフケアにたどり着くという流れはいい。孤立するのもよくない。
ただの再生物語ではなく、母親のエピソードを絡めることでエンタメ性が追加された。車内ですばるが母親に放った言葉に感動してしまった。最後は昴が立ち直ったことがハッキリわかるわけではないが、その演出もさりげなくてとてもいい。その方がリアルに感じられた。いい映画だった。
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