劇場公開日 2023年12月29日

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「陳腐なメッセージも宇宙から発信すれば違って響く」僕が宇宙に行った理由 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0陳腐なメッセージも宇宙から発信すれば違って響く

2024年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

宇宙旅行の記録として貴重な作品だ。完全に民間人の目線で宇宙旅行の道程を捉えたのが新鮮。どんな訓練をパスする必要があるのかとか、どんな検査が必要なのかとか、お金を払うだけでは突破できない様々な難問があるのだと知れる。遠心機のようなものに乗せられてひたすら回される特訓はかなりつらそうだ。
でも、本作の見どころはやっぱり宇宙のシーン。ISSから地球を見下ろした時のシンプルな美しさと、地球に還ってきてから二カ月後に勃発するロシアによるウクライナの軍事侵攻を対比的に構成し、平和というテーマを浮かび上がらせる。「宇宙からは地上の争いは何も見えない」と前澤氏が言うが、地表では多くの争いが今も続いている。その哀しみを受け止めつつ、宇宙へも想いを馳せる。
平和を願うというと、陳腐に聞こえるが宇宙視点でそれを見せられるとグッとくるものがある。宇宙まで行くという壮大なことをやっておきながら、最後はささやかな締めくくりにしているの点が良いと思う。

杉本穂高