「サイコな人々」熱のあとに バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
サイコな人々
2019年の新宿ホスト殺人未遂事件にインスパイアされて製作したフィクションの映画だが、あくまでインスパイアされただけで映画自体は全く架空の話とのこと。僕は事件自体を知らなかったか聞いたとしてもすっかり忘れている。事件の概要を検索して読んでも何も思い出せない。
うーん、これはちょっとなあ。主人公を含めて、登場人物たちに全く共感できない。主人公はサイコパスとしか思えないし、それが伝染したかのように周囲の人物もみんなちょっとずつサイコパスになっていく。娯楽映画的なサイコパスではなく、一般的な文字通り「狂ってる」という意味でのサイコパス。現実の事件に配慮してストーリーだけでなく人物像なども変えてあるようだが、そのため非現実的な人物や行動になってしまっているように感じた。それと肝心のホストが少ししか出てこないので、なぜ主人公がそこまで狂ったのかが曖昧になってしまっている。全く出てこないならまだしも、少しだけ出てきて深掘りはされてないんで、彼女が狂ったのがそのホストのせいなのか彼女自身のせいなのかがブレてしまっているように感じた。
映像も暗い場面が多く見にくいし、車の中のシーンは車の音がうるさくて台詞が聞き取りづらいところがあるのもマイナス。俳優陣は主演の橋本愛、夫役の仲野太賀、隣人役の木竜麻生、夫の後輩役の鳴海唯と若手演技派勢ぞろいで、それぞれ素晴らしいんですけどね。それだけでは映画の欠点を補いきれないというか。橋本愛と仲野太賀はもちろんだが、この映画ではやっぱり木竜麻生が非常に魅力的。個人的には脇役で出てる鳴海唯目当てで観たんだが、終盤までちょろっとしか登場せずチョイ役か?と思ったら終盤にちゃんと出番がありました。
ま、とにかくすげー暗い映画でした。主人公は自業自得だけど、周囲の狂わなくてもいい人たちが狂わされて主人公よりひどい結末迎えるのはやっぱりちょっと納得できなかった。