「待ちに待った人類終了だが…?」デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章 アルバーさんの映画レビュー(感想・評価)
待ちに待った人類終了だが…?
結局、人類終了しなくて残念。これに尽きる。
2時間の上映時間内で、原作最終巻の人類終了後のカオスな世の中を描くのは難しいと言う判断で、東京だけを壊滅させるという着地点を見つけた結果、愚かな人類が報いを受けることはなかった。
「ともだち」というパスワードが効力を見せる世界線の話を舞台に、原作よりも二人の友情、大葉との恋愛にフォーカスしたテーマで描ききり、幾田りらさんのほのぼのしたエンディングで幕引きとなった。
物語としては綺麗になったが、Don’t look upや三体のような、「愚かな人類滅亡してくれ」願望を満たしながら、健気な日常に思いを馳せる倒錯的な快楽を愉しむ作品ではなくなってしまった。そのせいで、前章のエンディングであのちゃんの絶絶絶絶対聖域が絶望をスクリーンに叩きつけたようなカタルシスはない。
また、おんたんと門出の関係そして世界を変えた「はにゃにゃふわー」は意外とあっさりと描かれていて、原作のような破壊力が表現されていなかった。これは前章で輝いていたあのちゃんの演技の限界を感じざるをえず少し寂しかった。難しいシーンなだけに演出でカバーしても良かったように思える。
全体的に、優等生で真面目な浅野いにおファンが作ったような、手加減、手心、生温かさが感ぜられる、行き届いた仕上がりが仇となって心に残すものもなければ心が動くこともない、まるで優しいAIが自動生成したような凡作だった。
原作者の「零落」的開き直りがワークせず、万人受けもしなければ、一部に刺さることもない、誰のものでもないモノになってしまったのだろう。
上映日が延期になるなどスケジュールにも追われていただろうし、12話のアニメならもっと上手く描けたのかもしれない。
前章はすごく良かっただけにすこし残念。次回作に期待。