「住民代表の存在感が薄すぎる」コンクリート・ユートピア 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
住民代表の存在感が薄すぎる
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最初の導入部分を除いて、本編はいきなり壊滅的な被害を受けたソウルの街に、唯一無事だったマンションがあることが示されるところから始まる。しかしなぜこのような壊滅的な災害が発生したのか、なぜこのマンションだけ大して被害を受けていないのか、世界の状況はどうなっているのか等、そもそもの状況がよく分からない。ストーリーの途中で明かされるのかと思いきや、結局明かされないのでもやもやしながら観ることになる。
マンションの住民代表となるヨンタクは、ストーリーの鍵を握る人物だが、終始存在感が薄い。代表に選ばれる人物なのに、マンションの火事を消化した件以外では、誰も彼の顔を知らなかったのも不自然。彼が権力を握り狂っていく様を描きたかったのだろうけど、ストーリーの途中から急にいかにもな悪人になるのがわざとらしい。しかも実は彼がマンションの住民では無かったと明かされても、彼がどんな人物か最初からよく分からないので、全然驚きが無い。
また、終盤で主人公にあたる防衛隊長のミンソンが死ぬのも、いかにもお涙頂戴的な演出で蛇足にしか思えない。死ぬ展開にする必要性が感じられない。
以上の理由により、終盤に進むに連れて観ていて退屈になってきた。この出来でアカデミー賞の韓国代表作品か、と思わされる映画だった。
未曾有の災害時における住民達のサバイバルという設定だけは面白かった。水道もガスも止まっている状況で、住民の代表を選出し、住民各自に役割を割り振る。壊滅的な世界で生き残る方法を模索する様は、見ていて興味深い。ここをもっと詳細に描いて欲しかった。
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