劇場公開日 2024年1月5日

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「このアパートは世界の縮図」コンクリート・ユートピア おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0このアパートは世界の縮図

2024年1月6日
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鑑賞方法:映画館

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以前は全く興味のなかった韓国映画ですが、近年は良作ばかりですっかり魅了され、本作も韓国作品というだけで飛びついて、公開初日に鑑賞してきました。

ストーリーは、大規模な自然災害に見舞われたソウルで奇跡的に倒壊を免れた唯一のアパートに、救いを求めて群がってきた人々が起こす事件に危機感を抱いたアパート住民が、902号室のヨンタクを代表に選び、部外者を追い出して住民だけで治安を守って生活しようとルールを作るが、しだいに生活は行き詰まり、ヨンタクの言動も不穏なものになっていくというもの。

なぜか1棟のアパートだけが倒壊を免れるという不可思議な設定さえ飲み込めれば、あとは物語にぐいぐいと引き込まれます。テンポのよい展開、ほどよいバイオレンス、醸し出される緊迫感など、さすが韓国映画と思わせるおもしろさです。その上で、人の愚かさや醜さを浮き彫りにして、これでもかととことん見せつけてきます。

アパート住民と部外者のそれぞれの立場から発する言葉には、それぞれの正義と言い分があり、どちらが間違っていると断罪できるものではありません。あえて言うなら、相手の言うことに耳を貸さず、自分の主張だけを貫こうとして衝突することが、いちばんの害悪のようにも思えます。優先順位の最上位に「自分」を置き、利害だけで物事を判断すれば、いつどこで誰が考えても結果は同じでしょう。

思えば、このアパートでの出来事は、現在の地球上で起きていることの縮図でもあり、この星に人類が生まれて以来ずっと続いている争いのようにも見えます。それだけ業の深い、人間の性のようなものなのかもしれません。それでも、ラストシーンにわずかばかりの希望が見えたことだけが救いです。

家族を大切にし、一緒に平和に暮らす家を守りたかったというヨンタクの言葉に、嘘はなかったと思います。そしてそれは、彼に限らず誰もが抱く願いだと思います。その家族が、血のつながり、コミュニティのつながりにとどまらず、国境をも越えるような大きなものであったなら、今地球上のあちこちで起きている紛争もずいぶん減るのではないでしょうか。口で言うほど簡単なものではないとわかっていますが、それでも諦めたくはないと思います。

主演はイ・ビョンホンで、じわじわと変容していくヨンタクを好演しています。脇を固めるのは、パク・ソジュン、パク・ボヨン、キム・ソニョン、パク・ジフら。

おじゃる