「タイトルなし(ネタバレ)」春の画 SHUNGA まゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
横尾忠則さんのお母さんの話、感動してなんか涙が出た。実子ではない異性の子が語るところもまた良いではないか。
大らかだな〜と思う反面、この時代は妊娠したら安易に堕胎したり、次々と子が出来ては口減らしで売ってしまったり、…と思いながら見ていたところ、春画ールさんが似たようなことを言っていて、春画の嫌いなところもあるとコメントしていたのがすごく印象に残った。やっぱりそういう事気になるよね。
あと、海外と決定的に違うのは、日本では著名なビッグネームが春画を手がけることはあるが、海外はエロ目的の絵には手を付けないという話。性そのものに対して考え方が全然違うんだなと思った。
もう一つ、2次元ではなくて3次元だよという話も印象的だった。手にとって初めて、空摺りや雲母摺りを楽しめる。江戸時代の行燈の薄明かりで見る春画は、さぞ艶めいて美しく見えただろう。蒔絵とか螺鈿が光る感じ、あ、そうか工芸品なのか。殿様が特注した春画の豪華絢爛さには「おお〜〜っ」と思わず声が出た笑
当時の最高峰の彫師たちの超絶技巧が、もう現在では再現できないばかりか、一体どうやって彫ったのか…にわかに信じ難く、人間の手仕事はここまで可能にするのかと目を見張った。冒頭で現代の数少ない職人さんが陰毛の一本一本を彫り出していく工程があるのだが、あれを見た後に見ると、本当に当時どうやったらこれが彫れるのか理解できないし、目元が薄っすら赤味を帯びて血色を感じるところなど感動。
割り絵のアイデアも本当に画期的。映画や漫画のカット割り、コマ割りみたいなものが、もうこの時代にあるのね。臨場感が全然違うし、顔を隠したり、目だけチラッと見せたり、鏡に映る足を描き込むところなど、工夫がたくさん。他にもパロディやギャグにしてるもの、仕掛け絵など、これを手作業で数百部とか作ってたことを思うと、映画でも言ってたけど確かにどうかしてる気はする笑 新しさや刺激を求めて段々と題材やシチュエーションが広がっていき、世相に比例して不穏さの漂う春画が出て来たりして、こういう系譜というか流れがあって現代の文化全般に繋がっているんだなーと改めて思った。
すごく面白かったです。ぜひ実物を手に取って見てみたいな。