劇場公開日 2023年11月24日

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「春画、猥雑さ故の自由」春の画 SHUNGA Kyojiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0春画、猥雑さ故の自由

2024年1月7日
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鑑賞方法:映画館

知的

春画は、鈴木春信、喜多川歌麿や葛飾北斎といった江戸浮世絵の巨匠たちによって描かれ、その技術的精巧さと芸術性ゆえに再評価が始まっているが、ご存じだろうか?

北斎の「蛸と海女」や春信の「艷色真似ゑもんシリーズ」をはじめとするその想像力、バライエティーの豊かさから江戸時代の人々の性に対する開放的な姿勢がよくわかる。そしてその根底には男女対等や女性の性的楽しみを肯定する姿勢がある自由な表現の場として機能していた背景があるようだ。

過剰といえる陰部と男女の行為描写は子だくさんの願いと表裏一体の関係にある。春画は平安時代から性教育の指南書や嫁入り道具として、さらに戦争に行く兵士がお守りにしたりと、春画が持つ文化的価値の多様性を示している。

制作には一流の絵師だけでなく、彫り師や摺り師も協力し、その結果として生まれる緻密な表現としての質の高さは、検閲する御上の目に触れない自由な場でしか発表できない至高の逸品といえるでしょう。

この「色好み」は伊勢物語から西鶴、谷崎潤一郎に至るまでの単なるエロティックな系譜の表現上にあるという指摘にとどまらず、画家・会田誠の言葉にあるように、春画は近代的な価値観に対するアンチテーゼとなり得る新たな見方も提供しているのではないか。

つまり、明治時代に入り「猥褻画」と見なされ、日本文化から姿を消した春画ではあるものの、翻って世界の美術史を眺めてみる。すると海外の画家たちが裸婦を描く一方で、春画は性行為を具体的に描写していて、春画は西洋美術とは異なる日本独自の表現として際立っている。それはまた性的行為表現の自由と規制に関する現代の議論にも重要な視座を与えているということであろう。

ジャパニーズ先住民