劇場公開日 2024年3月1日

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「みんな生きてて欲しい」52ヘルツのクジラたち yuuさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5みんな生きてて欲しい

2024年4月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

上映終了前にどうしても観ておきたくて駆け込みで鑑賞。役者さんたちの演技は素晴らしいのだけど、あの原作を135分にまとめるのはどうしても詰め込んだ感は抱いてしまう。原作を読んでいるか、読んでいないかで映画の印象がガラッと変わるかも。演出の過剰な所が少し気にはなりつつ、良くも悪くも物語の展開は早くて無駄な所はないが、ここがこういう描き方になるか…と言う点が多々あって少しモヤモヤはあった。
この作品、確かにどうしたって泣けるんだけど、泣ける映画っていう括りになっちゃうのには違和感がある。少なくとも感想として「泣けたね。良い映画だったね。」で終わりにして良い物語ではないだろう。

登場人物の中でも美晴の描かれ方すごく好きだった。とにかく辛く重い場面が次から次に展開するなかで、美晴と貴瑚のシーンの友情に思った以上に泣いてしまった。美晴の明るさと強さが貴瑚にとってもこの物語にとっても救いというか大きな支えとなっているのではないかと思う。
52演じる子役の子も、セリフのない中での目や表情での演技にもすごく引きこまれて素晴らしい。

貴瑚とアンさんそれぞれの境遇で抱えてきたものを考えるとあまりにも苦しすぎて。原作読んでて分かっていてもアンさんの気持ちを考えると本当に叫びたくなって当然で、肯定してしまうのはきっと違うけれどアンさんはああならざるを得ないほどもう心はぐちゃぐちゃだったのだと、映像だからこそ苦しいほど体感した。どうしても観てる側としてはどうかこんな結末にならないで欲しかったと思ってしまう。

個人的な勝手な思いとしては、声が届かなくて孤独で限界で苦しい思いをしてる人たちにどうか生きていてほしいと心から思った。綺麗事だけど生きているだけで本当にいいのかもしれないって思わずにはいられない。でもその生きているだけということさえ辛くてたまらないという状況もあるんだよな、と思ったり、、
孤独の中で生きる人達がなんとか生き延びて、いつか生きていて良かったと思える世界であって欲しいし、誰かの声なき声を掬い上げることができる自分でありたい。

yuu