「杉咲花の演技に圧倒される!」52ヘルツのクジラたち おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
杉咲花の演技に圧倒される!
予告で観た杉咲花さんの演技に誘われて、先に観た「コットンテール」に引き続き、泣く気満々でハンカチ片手に鑑賞してきました。
ストーリーは、母親から虐待を受け、継父の介護まで押し付けられて育った三島貴瑚が、東京から海辺の一軒家に引っ越してきたある日、母親から虐待を受けて声を出すこともできない少年と出会い、かつての自分の声なき悲鳴に耳を傾けて救い出してくれたアンさんこと岡田安吾のことを思い出し、自身も同じように少年に寄り添っていこうとする姿を描くというもの。
近年、子どもたちの家庭環境が問題視される事案をたくさん目にするようになりました。親からの暴力はもちろん、ヤングケアラーやネグレクト等、そのケースもさまざまです。それら全てが明らかな虐待であるにもかかわらず、子どもたちがSOSを発信できないところに、この問題の根深さがあります。親が怖い、でも親が好き、だから親と離れたくないという思いや、家事や介護がつらい、でも親に嫌われたくない、だから素直に従うなど、親を慕う子どもの心を踏みにじるような虐待行為には強い憤りを覚えます。
本作でも、継父の介護に無自覚に苦しめられた挙句、母から罵られた貴瑚が、思考停止状態から死を選ぼうとする姿に、胸が締め付けられそうでした。そこから安吾や美晴に苦しい胸の内を吐露する場面は、涙を禁じ得ませんでした。杉咲花さんの圧巻の演技が、観客の心を深く抉ります。また、安吾の「家族が呪いになったら逃げ出していい」という言葉が胸に突き刺さります。
でも、終わってみれば、自分の中ではここがピークでした。その後、作中では、少年への虐待、親にも言えない安吾の悩み、大人になった貴瑚が受けるDVなど、息もできないような苦しい生活を描きます。そして、その苦しさを声にすることもできない、声をあげても届かない、そんな絶望の淵に立たされた人々の姿を通して、声なき悲鳴に耳を傾けることの大切さを重層的に描こうとしています。それはよくわかります。
しかし、正直言ってそれがかえって散漫な印象を与えているように感じ、思ったほど泣けませんでした。特に新名に関する場面は、結局また貴瑚に収束するので、まるまるカットしてもいいような気がしました。そのぶん、貴瑚が虐待から子どもを守るために奔走する姿、今度は安吾の声に耳を傾けて寄り添う姿などを描いてもよいのではないかと感じました。家族の呪縛と安吾による救済を経験した貴瑚が、同じような境遇の少年を救いたいと願う姿をもっとシンプルに描くだけではだめだったのでしょうか。
主演は杉咲花さんで、もはや何も言うことはありません。脇を固めるのは、志尊淳さん、小野花梨さん、宮沢氷魚さん、西野七瀬さん、真飛聖さん、余貴美子さんら。中でも、西野七瀬さんは一皮むけたような演技が印象的でした。一方、宮沢氷魚さんは、杉咲花さんと同じフレームに収まったときの演技力の差が気になって、ちょっと気の毒でした。
西野七瀬良かったですよね♪
宮沢氷魚は泣きの所がもう一つという感じでした。
あとまた余貴美子無駄遣いな気がします😳
兎にも角にも、杉咲花の圧倒的演技は今後10年は並ぶ役者居ないんじゃないかな👏
空港での泣きを堪える所は、こっちが号泣でした😭