「原作もの故の弱さ」52ヘルツのクジラたち ぽてちさんの映画レビュー(感想・評価)
原作もの故の弱さ
2021年本屋大賞を受賞した町田そのこさんの同名小説の映画化作品。原作は2020年8月に読了済みだが、非常に大雑把なストーリーしか覚えていなかった。とてもよかったという印象だけは残っていたが……。
タイトルは「他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一頭だけのクジラ」から「たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない」という意味がある。転じて、虐待の被害者や性同一性障害で苦しむ人たちの声なき声を表している。
という前提に立って映画を観れば、主人公キナコが声を出せない少年を保護する過程は理解できる。アンさんがキナコを救い出すのも同様だ。ただ、弱者が弱者を庇い合うという構図ではない。彼らを助ける人たちもたくさんいる。その意味ではクジラよりも恵まれているのかもしれない。
原作ではわからなかった(ネットで探して聴いた)「クジラの声」も、映画ではリアルタイムで聴くことができてよかった。反面、虐待されていた割に健康そうな外見に違和感を覚えたり、芝居臭い演技に辟易したりと、映像ゆえの欠点も散見した。
映画の印象が消えないうに、積読している文庫本で再読することにしよう。
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