「聴こえる人だけに届く心の叫び」52ヘルツのクジラたち 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
聴こえる人だけに届く心の叫び
原作は読みました。とても良かったです。
作品の中に没入する体験をしました。
原作にとても忠実な映画化だと思いました。
テーマは現代の現実にある問題点。
《毒親、ヤングケアラー、児童虐待、DV、トランスジェンダーなど、》
【あらすじ】
主人公の貴湖(きこ=杉咲花)は、傷ついた心と身体を休めるために、
東京から北九州の海辺の町に移り住んだ。
そしてすぐに虐待されて声を出せず話せないムシと呼ばれる
少年と知り合う。
そして3年前の過去へとストーリーは戻ります。
母親が再婚した義理の父親は3年前から寝たきりになり、
貴湖(杉咲花)が介護を担っている。
母親は働き手で家計の面倒を見てくれるので、貴湖は
ヤングケアラーの現実を受け入れている。
しかし父親が誤嚥して入院した時、母親は激怒して、
「お前が死ねばよかった」と、暴言を吐き暴力を振るった。
心と身体に限界が来て、街で車に飛び込みそうになったの時、
岡田安吾(志尊淳)が助けてくれる。
安吾は「52ヘルツの鳴き声を出すクジラの話」をしてくれる。
52ヘルツの鳴き声を出すクジラは、
どんなに泣いても仲間にも誰にも
気付いてもらえない。
アンさんの聴かせてくれたクジラの声は貴湖の悲しみに寄り添うような
響きだった。
アンさんには貴湖の声なき叫びが届いたのだと思う。
病気の父親を介護士や行政に任せる手続きをアンさんが手伝ってくれて、
貴湖は配送センターの仕事に就く。
そして専務の息子の新名主税(宮沢氷魚)と知り合い、愛されて
同居するようになり、幸せを実感する。
しかし主税が父親の意思で取引先の娘との結婚を決められる。
主税は貴湖を愛人として近くに置きたいと言う。
しかし思いも寄らない事件が起きる。
安吾(アンさん)が主税の父親に貴湖という恋人がいる事を
手紙で告げたのだ。
その結果、主税の結婚は破談になり主税は専務を辞めさせられる。
荒れ狂う主税は貴湖に暴力を振るう。
安吾の身辺調査をして、アンさんがトランスジェンダーで
生まれた時の性別は女性だと突き止める。
主税に激しい言葉で責められたアンさんは
浴室で自殺してしまう。
そしてアンさんの主税当て遺書を読みもせずにガスの火で燃やす主税。
それを見た貴湖は自らの腹部に包丁を突き刺す。
そして最初に戻り
現在。
貴湖の親友の美晴(小野花梨)も海辺の家に長期滞在してくれている。
少年(ムシ)の親戚探しもうまくいかず、実母(西野七瀬)は、
我が子を見捨てて町を出て行く。
貴湖は福祉制度を勉強して愛(いとし=ムシの本名)の行き場を
探し始める。
貴湖は苦労して養子縁組をして愛を引き取る。
52ヘルツの音を聴き分ける者たち。
人の痛みに耳を傾ける者たちが身体を寄せ合って生きる。
原作で感動したのですが、映画は丁寧だけれど、
そんなには迫ってきませんでした。
アン役の志尊淳。
健闘しましたが難しい役どころ。
残念だけどもう少しトランスジェンダーに見える何かがあれば、
本物のトランスジェンダーに見えたかと思いました。
そして初の悪役でしょうか?
宮沢氷魚の迫力ある演技には驚きました。
暴力でか弱い杉咲花が吹っ飛ぶシーンは真に迫り、
男の暴力の凄まじさに心底怖かった。
演技力に自然さがあり、そして育ちが良さげなので、役にぴったり
ハマりました。
貴湖はこれから仕事に就き、自活して行くのだろう。
苦しみを一人で抱え込まない事。
そして助けてくれる人の存在が大事だと思いました。
現代の現実にある病巣や闇に斬り込んだ佳作でした。
コメントありがとうございました。女の子の服の描写そういえばありましたね、結構忘れており悲しい。すみません。でも、やりとりしてると思い出したりして、それもまた楽しいです。
琥珀糖さん こんにちは。見てきました。
私も志尊君良かったですが、あまりトランスジェンダーっぽく見えなかったです。結構大きいですしね。でも女子高生時代の写真はかわいかったですね。
こんばんは。
志尊淳に関しては、個人的には(本人にはどうしようもない)体格の問題に感じました。
所作や表情はとても上手かったので、これで吉沢亮くらいの身体つきだったらなぁ、と。
琥珀糖さん、こんばんわ。いつもコメント有難う御座います。
多分共鳴していると何処かに逃れたい思いが働き、感動に結びつかないのかもです。心が健全な人はそういう境遇が無いので評価高いのかも知れません。
琥珀糖さん、共感とコメントありがとうございます。(#´ᗜ`#)
宮沢氷魚さん初の悪役?
優しいイメージだけに
暴力振るって貴湖が吹っ飛ぶシーンは嫌な気分になりました。
だからこそ、宮沢さんがあの役にピッタリはまったんですね。