か「」く「」し「」ご「」と「 : 特集
【予想を突き抜けた“編集部員No.1”】観たらまさかの
超良作!!「君の膵臓をたべたい」作者が描く繊細で純度
100%の切なさに感情崩壊、涙が出るほど尊くて!! 編集
部、そして映画のプロが“最愛”の理由を語ります

「きっと、こういう作品なんだろうな~」という“予想”を飛び越えて「これ大好き!!!!」となった映画があるんですが――
それが「君の膵臓をたべたい」などで知られる作家・住野よる氏の人気小説を映画化した『か「」く「」し「」ご「」と「』です(5月30日公開)。

ポスター&あらすじで、いろいろな先入観を持つかもしれませんが、実は映画ファンこそ唸りまくる“仕掛け”がかくされています。この斬新さも相まって、感情が余計に揺らいで、思わず感極まって――観終わった後には“推したくなる”気持ちが芽生えちゃいました。
本特集では、本作を心の底から愛した人たち(映画.com編集部員と、映画批評家)の“声”をお届け。その中には「これ、現時点のベスト」と語っている人もいるほど――その理由、是非知ってください!!!!
予告編、いかがでした? 本題のレビューの前に、本作が既にSNSで“注目の的”になっているということをお伝えさせてください。
キャスト情報を“かくした”うえで行ったXへの最初の本作ポストは、投稿日中で“200万imp”とバズり、フォロワー数も約1万まで一気に増加する事態に(4月21日時点では約2.5万人!!)。TikTokでは、予告編が480万再生という高記録となっています。
この盛り上がりからも“チェック必須”であることがわかるはず。ここからは“あなた”に芽生えた鑑賞意欲をさらに高めてくれる、三者三様の“最愛レビュー”をお楽しみください!!!!
【レビュー①:編集部女性】想像を軽く超えてきた
切なさと共感1200%。ラストの感情はプライスレス

最初に語ってもらうのは、映画.com編集部の女性メンバー。「こんなにリアルで、解像度の高い青春映画、見たことない……!」と感じたそうで、しかも鑑賞後、数日が経っても、物語が心から“消えない”ようです。
●筆者紹介 「君の膵臓をたべたい」住野よるさんが原作と知って、“胸にくる”物語なんだろうな、と予感はしていました。でも観たら、期待以上でした。 “少しだけ人の気持ちが見える”チカラを持った高校生の物語――でもそれは良いことばかりではなくて、むしろ「人の気持ちが見えるからこそ、誤解やすれ違いが生まれる」ことが浮き彫りになっていきます。ここがとても興味深く、繊細な感情にフォーカスする描写が本当に本当に絶妙。 そして、青春全開のイベントに射抜かれました。図書館で昼寝をしていて起きたら、好きな人が目の前にいて、ドキドキしたり。「修学旅行中に鈴を交換すると、ずっと一緒にいられる」という、どの学校にもひとつはあるジンクス(!?)に心を乱されたり。そんな懐かしい出来事のひとつひとつが愛おしく、きらきらと輝きを放っていました。 それらを鑑賞する“良さ”たるや、私が高校時代に感じていた、苦しいような、切ないような、けれどもどこまでも潤(うるお)いに満ちた“あの感情”が、今の自分の隅々に染み込んでいくほど――とことん大満足でした。 ふと昔の自分と重なり、彼らとともに青春を歩み直し、改めてみずみずしい感情を手にしているような、尊すぎる映画体験でした。 本作を、このうえなく忘れがたくさせているもの――魅力のひとつに、キャスト陣の熱演があると思います。 「御上先生」での存在感も記憶に新しい奥平大兼さん。「余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。」で、観客の心を震わせた出口夏希さん。さらには佐野晶哉さん、菊池日菜子さん、早瀬憩さん……。それぞれが思春期特有の“ちぐはぐ感”を絶妙に表現していて、この5人でなければ、ここまで豊かで複雑な心理は描けなかっただろう、と強く思いました。 そして…熱演と映像と音楽などのさまざまな要素が絡み合い、切なさと共感が1200%、いやそれ以上に増幅し続けていくことも素晴らしかったです。 わざとらしさも嫌味もない、屈託のない会話が好き。 “誰かを傷つけることの苦しさ”に向き合う勇気が好き。 自分よりも、誰かの幸せを願う、彼・彼女らの眼差しが好き。 エンドロールが終わり、想像していなかったほど“素晴らしい感情”を胸に、私は静かに席を立ちました。 続いて登場するのは、映画.com編集部の男性メンバー。当初は「“自分の映画”ではないかも?」と思っていたそうですが、その予想は鮮やかに“逆転”したそうで……今では「現時点での個人ベスト」と言っているほど! 一体、何が起きた? ●筆者紹介 スライディング土下座を決めた後、青空に向かって「この映画大好きだ!!!!」と叫びたい。 物語のベースとなる「青春模様」は、誰しもが味わった、もしくは味わう可能性があった“理想”と“親密さ”を感じるもの。で、とことんすごいと思ったのが、本作は「4D映画ばりの体感型」と言えるほど、登場人物の気持ちにシンクロしちゃう点。 ポイントは“少しだけ人の気持ちが見える”という設定。最初はその描写にぎょっとしましたが、よくよく考えてみると「人の感情が“ちょっと”見えちゃう」なんてことは、往々にしてみんな備えているものですよね。だから、人物の悩みが「自分もそうだったなあ」と共感してやまないんです。 でも、そんな“共感”を押しつける描き方はせず、あくまでひとりの人間に芽生えた感情を丁寧に掬い取って、観客に提示してくる。仕事柄、重厚なアカデミー賞作品や世界を震撼させた衝撃作など大量に観ていますが、本作はそのなかにあっても「非常に優れた一本」。なぜなら製作陣が、スクリーンの前にいる“受け手”を信頼し、物語を紡いでいるから。 その姿勢、大好きです。 登場人物は、みんな本当に良い奴ばかり。“悪い奴”がいない優しい世界です。 でも、それぞれが「“少しだけ”見えてしまう」がゆえに、自分よりも他人のことを優先して考えがちで、それが結果的に不和を生んで――彼らに思わず手を差し伸べたくなる。それほど現実感のある感情が描かれています。 相手の気持ちを知って、自分がどう行動していいのかわからなくなる。あぁ、めちゃくちゃ身に覚えがある。こんな自分が好きになってしまってごめんなさい。あぁ、胸がキュッとするほどわかる。 他人事だと思っていた映画に“あの頃”の自分がいたことにびっくり――上述の優れた映画であることに、“嬉しい驚き”も加味する形で“現時点の個人ベスト”だと強く思っています。 いま「この映画に“あなた”がいるかも」って前置きしながら、いろんな人にこの映画をおすすめしています。“自分”の大好きな作品が、“誰か”の大好きな作品になるなんて、めちゃくちゃ素敵なことですから。 最後に推していただくのは、映画批評家の児玉美月さん。“映画を観る・語るプロ”として、中川駿監督の作家性から演出の妙、そして重要なテーマを紐解いてもらいました! ●筆者紹介 人には言えない「かくしごと」を抱えている、5人の高校生たち。映画は視点を変えながら、彼らがそれぞれどんな世界に生きているのかを、丁寧に見つめていく。 本作の監督を務めたのは、「LGBT」についての授業が行われたことを発端にひとつのクラスに変化が訪れる「カランコエの花」、4人の高校生たちの卒業式までの2日間を追った「少女は卒業しない」といった映画で、これまでも瑞々しい若者たちの姿をスクリーンに立ち上げてきた中川駿。 これまでの中川監督作品に共通しているのは、どれも「かくしごと」を持つ若者たちが物語を駆動させていくところにあった。透明感のある映像と繊細なカメラの身振りによって、思春期という人生におけるもっとも傷つきやすい季節にいる彼らの秘められた心を、決して無理にこじ開けてしまわないようにするまなざしはどこまでも優しい。 今回新作となった映画『か「」く「」し「」ご「」と「』では、まさにそうして築き上げてきた中川監督の確かな手腕が発揮されている。異性だけではなく、同性に恋する若者もごく自然に存在する世界観は、「カランコエの花」のテーマ性を引き継いでいると言えるだろう。 映画はいまの時代を生きる5人の揺れ動く気持ちと共振する手持ちカメラを多用しながら、時間をかけてじっくりと掬い上げていく。とくに終盤、ひとつのクライマックスとなる重要な場面のロケーションにはあえて図書館が選び取られ、声の発せられない場所だからこそ俳優たちの微細な表情の演技そのものが魅せる。 プロジェクションマッピングの鮮やかな色彩が放つ光、水族館の水槽が乱反射させる虹色の光など、彼らの万華鏡のように変わりゆく心象風景を反映するかのような映画的な光の演出もまた、作品への没入感を一層高める。 「ヒロイン」ではなく「ヒーロー」になりたいと願う三木が活躍する演劇祭でのヒーローショーでも、たんにお芝居が披露されるのではなく、舞台に導入された光と闇のモチーフが巧妙に利用され、それぞれの想いが錯綜する緊張感溢れる場面に仕上がっている。 『か「」く「」し「」ご「」と「』は、そうして運動、音、光といった映画ならではの要素をふんだんに絡めながら物語を描いており、豊かな映画体験をもたらしてくれる。 たとえば青春恋愛映画では定番とされてきた「不慮の事故」や「不治の病」といった設定によって強く感情を動かそうとするのではなく、一風変わった仕掛けが施されていながらも、あくまでもわたしたちが生きている地続きの日常そのものに軸足を置きながらそっと感動に導いてくれる『か「」く「」し「」ご「」と「』は、だからこそ若者世代のみならず大人の観客にも響く。 どれだけ誰かが羨ましく思えても、他人も自分と同じように日々さまざまなことを考えながらときに葛藤し、もがきながら生きているということ。他人の気持ちがわからないのと同じように、自分の気持ちも実はわかっていないかもしれないからこそ、何度もなぞってあげなければならないこと──ふと忘れかけてしまう、生きていくうえで大切なそうした何かが『か「」く「」し「」ご「」と「』にはいくつも詰め込まれている。 以上、“最愛”レビューをお届けしました! 予想を突き抜ける超良作――上質な作品を愛する“あなた”に、ぜひ映画館で堪能していただければと思います。【レビュー②:編集部男性】全く予想してなかった
まさかの本作が現時点の“個人的・今年No.1”です──【レビュー③:映画批評家】中川駿監督の手腕に着目
この映画は若者世代だけでなく大人の観客にも必ず響く