コラム:上質映画館 諸国漫遊記 - 第2回

2025年1月7日更新

上質映画館 諸国漫遊記

映画を愛する人にとって、テレビやネット動画もいいけれど、やはり映画は映画館で観るものだと考える方は多いだろう。本コラムでは全国の映画館の中から「これは」と思う上質なスクリーンを訪問し、その魅力をお伝えしたい。(取材・撮影・文/ツジキヨシ)


ローソン・ユナイテッドシネマ札幌/IMAXレーザー 大きいことはいいことだ。圧倒的な迫力が満喫できる

ローソン・ユナイテッドシネマ札幌を訪問
ローソン・ユナイテッドシネマ札幌を訪問

▼サッポロビール工場跡地にある巨大IMAX

コラム第2回は、初回に続き北海道・札幌の上質劇場をお届けする。札幌駅からほど近いサッポロファクトリーという複合商業施設にある「ローソン・ユナイテッドシネマ札幌」の<IMAXレーザー>仕様のスクリーン11をご紹介したい。

この「IMAXシアター」は、1993年に「サッポロアイマックスシアター」という名称で当時日本最大のスクリーンサイズ(縦20×横27m!)として誕生した上映施設が元になっている。1998年に、このスクリーンを含む11スクリーンを擁するシネマコンプレックスとして「パラマウント・ユニバーサルシネマ11」という名称で開館。2004年に運営がユナイテッド・シネマに統合されたことに伴い、現在のユナイテッド・シネマに改名、2010年冬には、IMAXシアターがリニューアル。IMAXは、フィルム上映からデジタル上映システムに変更され「IMAXデジタルシアター」に刷新、音響設備もデジタル化された。2019年11月には上映システムをレーザープロジェクター&12ch音響仕様の「IMAXレーザー」に強化、同じタイミングで、シネコン全体のシートの交換やロビーなど館内設備もリニューアルされた。※2024年12月20日より「ローソン・ユナイテッドシネマ札幌」へ劇場名を変更

こうした沿革から想像できる通り、近年新規に作られたIMAXシアター、あるいは既存スクリーンをベースに改修されてIMAXシアター化したスクリーンとは異なり、劇場構造がいわゆる市中の映画館とは趣が大きく異なっている。スクリーンのサイズに比して、シアターの奥行きが短く、上からみると横長サイズで座席配置の傾斜がかなり急、いわばアトラクションシアタースタイルのスクリーンである。前席の人でスクリーンが見えなくなることはほとんどない、それくらい傾斜がきついのである。現在のスクリーンサイズは公開されていないが、目測だと幅は20m以上はありそうで、感覚的には東京・池袋にあるグランドシネマサンシャインや109シネマズ大阪エキスポシティにあるIMAXレーザー/GTテクノロジー(後述)で使われている巨大スクリーンと同じレベルの超ビッグサイズである。

サッポロファクトリーは、明治9年(1876年)創業の札幌開拓使麦酒醸造所を母体とするサッポロビールの跡地に出来た一大スポット。全7棟の施設内には約150のショップ、レストランのほか、地ビール醸造所や見学館、アトリウム、ホテルなどが点在。その中でも大きな存在感を示すのが、「ローソン・ユナイテッドシネマ札幌」であり、そのシンボル的なスクリーンが「IMAXレーザー」仕様のスクリーン11だ。

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▼IMAXレーザーとはなにか

IMAXの沿革を紹介するのが本稿の目的ではないが、ごく簡単にその技術的な側面を解説しておこう。

IMAXとは元々、超大画面のアトラクション映像を上映するシステムとしてカナダで誕生。2000年前後から、劇場用映画を上映するシステムの機運が高まり、2008年には、デジタル上映用の「IMAXデジタルシアター」が登場し、ハリウッド映画を中心に多数の映画が続々公開された。IMAXデジタルシアターは、ランプ式の2K解像度のプロジェクターが使われていたが、それよりもさらに明るく、鮮明な高輝度/高解像度を志向した4Kレーザープロジェクターを使った「IMAXレーザー」が2018年に誕生、合わせて音響設備も、5chサウンドシステムから天井と壁面両サイドにもスピーカーを配置した12chサウンドシステムに進化した。スクリーンは「1.90:1」というアスペクト(縦横比)が採用されている。

2012年にはIMAXレーザーの上級グレード「IMAXレーザーGTテクノロジー」が誕生した。これは4Kレーザープロジェクター2台での上映に加えて「1.43:1」という、画面を天地方向に大きく拡大したスクリーンを採用した上映システムが生まれ、日本では池袋グランドシネマサンシャインや109シネマズ大阪エキスポシティの2館だけに採用されている。

日本では2015年4月に開業したTOHOシネマズ新宿で「IMAX12ch」システムが導入されたときのインパクトが忘れがたい。ここではIMAXデジタルシアターに12chサウンドシステムを組み合わせたハイグレードな設備であり、浦和や久喜、成田など、当時関東近郊を中心に展開してきたIMAXが、東京のど真ん中の新宿の地に、しかもTOHOシネマズという日本有数のシネマチェーンのフラッグシップシネコンの、最上級シアターとして作られたからだ。その後、全国各地でIMAXシアターが続々誕生、2018年にIMAXレーザーが登場すると、IMAXシアターが「IMAXレーザー」へ改修されるケースが増えた。TOHOシネマズ新宿も2019年に「IMAXレーザー」が導入された。

ローソン・ユナイテッドシネマ札幌は、1993年に「アイマックスシアター」(フィルム上映)として誕生→2010年に「IMAXデジタルシアター」(デジタル上映)→2019年に「IMAXレーザー」(デジタル/レーザー上映)と進化して、今に至る。その意味では、由緒正しい老舗IMAXシアターである。

なお、レーザープロジェクターとは何かを簡単に説明すると、スクリーンに映像を映し出す光源にレーザーを使った上映設備のこと。映画館用プロジェクターで長らく使われているランプ(正確には色再現に優れたキセノンランプという種類が使われる)と比べて、明るく、鮮やかさに優れている。光源の寿命も長く、初期投資額の高さを勘案しても、劇場運営的な意味でのコストメリットが高い。上映品位が高いというユーザー目線での利点だけでなく、運営側のメリットもあることから、徐々に普及しつつある。

バスセンター前駅から徒歩で向かうと、サッポロファクトリーの「フロンティア館」がお出迎え。その奥がユナイテッドシネマ札幌のある「一条館」だ
バスセンター前駅から徒歩で向かうと、サッポロファクトリーの「フロンティア館」がお出迎え。その奥がユナイテッドシネマ札幌のある「一条館」だ

▼清潔感が高く快適なローソン・ユナイテッドシネマ札幌

こちらのIMAXレーザーには9月中旬に訪問した。IMAXレーザーのスクリーン11で13時から上映される「エイリアン ロムルス」のチケットをインターネットを使って予約購入。ホームページをみると「CLUB-SPICEカード」という会員システムが非常にお得だったため、それに入会した。入会には600円が必要だが、平日は通常料金2,000円(IMAX等は、別途追加料金が必要)のところ1,300円に、土日祝でも1,500円とグッとお得になる。「エイリアン ロムルス」は平日のIMAX 2D上映となるので、1,800円(会員料金1,300円+IMAX追加料金500円)となった。つまりIMAXを平日に1回観れば、会員に入会してすぐに元が取れる。

会員システム(CLUB-SPICEカード)のメリットを紹介しているポップ看板。平日に一度でもIMAXを観るのであれば、入会したほうがお得だ
会員システム(CLUB-SPICEカード)のメリットを紹介しているポップ看板。平日に一度でもIMAXを観るのであれば、入会したほうがお得だ

ローソン・ユナイテッドシネマ札幌は、前述の通り、サッポロファクトリーという巨大な商業施設の一角に作られている。具体的にいえば、「一条館」という建屋にある。巨大なショッピングモールにある映画館と同じで、初めて行く場合は、少し分かりづらいかもしれない。ということで、当たり前の話ではあるが、ある程度は時間に余裕を持って劇場に向かったほうがよさそうだ。

今回は13時からの上映だったので、さっぽろ雪まつりが行なわれることで有名な大通り公園近くで早めに昼食を済ませ、地下鉄東西線「大通」駅の隣駅の「バスセンター前」駅から徒歩でサッポロファクトリーに向かう。地下鉄の最寄り出口と施設が直結しておらず、地上に出たときにサッポロファクトリーの姿は影も形もないのには少々面食らった。まぁ、スマホの地図アプリの案内にしたがって、問題なくたどり着いたけれど。札幌市内の主要なランドマーク的施設は地下街直結という例が多く、そこはご注意ということか。ちなみに札幌市内では「ポロクル」というレンタルサイクルサービスの普及が進んでいるが、そのポートがサッポロファクトリーにある。「ポロクル」は、全国の主要都市で広くサービスしているドコモ系バイクシェアのアプリがそのまま使えるので、筆者は帰りに利用した。雪の季節を除けば、札幌の街を自転車で疾走するのは爽快だ。

「UNITED CINEMAS」そして「IMAX」の看板がある建物が「一条館」。エスカレーターで1フロアあがると劇場の入口となる
「UNITED CINEMAS」そして「IMAX」の看板がある建物が「一条館」。エスカレーターで1フロアあがると劇場の入口となる

「一条館」地上からエスカレーターで1フロアー上がった2階が劇場入口だ。エントランスは、天井がそれほど高くはなく、やや老舗映画館という雰囲気が漂う。そもそも1993年に完成した「アイマックスシアター」が基本となって改築を繰り返してきただけあって、建物自体にはやや古めかしさが漂う。しかしながら、チケット販売機や待機スペース(椅子あり)など、実際の観客が利用する設備は最新かつ充実しているし、内装も美しく趣味の良さが感じられる。カーペットなど館内の清掃もしっかり行き届いていて、ゴミひとつない。カウンターで会員証を発行してもらったが、スタッフの方の対応が非常に丁寧で気持ちが良い。トイレも綺麗だし、コンセッション(売店)スペースも広い。スタッフさんの応対も含めて、とても快適だった。

IMAXレーザーがあるスクリーン11は、2階からエスカレーターで2フロアー上がった4階から入場するスタイル。スクリーンの最後方の中央に出入口を構えた、ちょっと珍しい作りである。4階フロアーには、SCREEN Xを含む5スクリーンが配置されていた。IMAXシアターは2階にも入口があったが、取材日にそこは閉鎖されていた。

エントランス奥にコンセッション(売店)スペースが広がる。明るく非常に清潔感に溢れた印象だった
エントランス奥にコンセッション(売店)スペースが広がる。明るく非常に清潔感に溢れた印象だった

▼IMAXの超大画面で「エイリアン ロムルス」鑑賞

チケットを入口の係員(非常に感じのよさそうな人でした)に確認してもらい、IMAXレーザースクリーンに入る。まず巨大なスクリーンが目に飛び込んでくる。池袋やエキスポシティ、成田以外のIMAXシアターでは感じたことのない、巨大さにちょっとたじろく。「そうそう、IMAXって、とにかく巨大なスクリーンが醍醐味だったんだよな」と心の中でつぶやく。座席配置が後方に向かってかなりの傾斜がつけられているが、それも、かつてのIMAX体験を思い起こさせる。スクリーンサイズは非公開だが、前述のように目測で幅は20m以上はありそう。それに比して劇場の奥行きが短く、座席が横長に多く配置されている点も特徴的で、昔ながらの「IMAXシアター」感がそこにも漂う。

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映画は「エイリアン ロムルス」を観た。本作は、IMAX以外ではスコープ(2.35:1)という横長の画面アスペクト(縦横比)で上映されているようだったが、実はIMAX上映用にスコープサイズの上下を拡張(1.90:1)した状態のバージョンでも作られており、IMAX上映にもフィットさせた作品でもある。実際に、全編が画面が上下に拡張した状態で上映されているので、その意味でもIMAX鑑賞の意義が感じられる。

画面サイズは不思議なものである。少し大きなスクリーンがある映画館は「大きいな」という当たり前の感覚しか得られないが、ある大きさ以上になると、それを楽々と飛び超え、別の感慨が生まれる。そこでは「映像世界の吸引力が増す」だけでなく「キャラクターが生き生きと動き出し」、その結果、「映画自体のリアリティを補強」してくれる。スマホで映画を観るのと映画館で観るのは「映画」が異なるもの、という意見は誰しも賛同してもらえると思うが、IMAXではその感覚がさらに別次元となるが、その原動力がスクリーンの巨大サイズである。こうしたことから、IMAXの根本的魅力はスクリーンサイズの大きさだと筆者は常々考えているが、ローソン・ユナイテッドシネマ札幌のIMAXレーザーは、実にIMAXらしい体験ができる稀有なスクリーンである。

シネコン内ではIMAX上映を積極的にアピールしている。取材時は「トランスフォーマー ONE」など公開直前の作品の掲示がされていた
シネコン内ではIMAX上映を積極的にアピールしている。取材時は「トランスフォーマー ONE」など公開直前の作品の掲示がされていた

▼映画の魅力を「ビッグ」に描く。大作アクション/SF映画鑑賞に最適

エイリアン ロムルス」は、基本的には漆黒の宇宙とすす汚れた宇宙船内が舞台になる作品であるため、暗い映像の中にキャラクターたちの姿をどう映し出すのかがポイントになる。ローソン・ユナイテッドシネマ札幌のIMAXレーザーは、画面が大きいというか、大きすぎるためなのか、黒は決して漆黒に描かれるわけではない。だが、情報量の豊富さや暗部に蠢く真の主人公「エイリアン」のなまめかしい姿態が巨大スクリーンで跋扈する姿には大いなる感動を覚える。冷静に言えば、黒が少し浮いているなぁと感じなくもないが、それは巨大画面を対峙しているときには些細なことである。映画は大画面で観るのが最大の魅力、という立場の方には絶対におすすめできる。

音響はIMAXらしく、迫力を極めて重視したハイパワーサウンド主義といった趣。細かい音を緻密、繊細に聴かすよりも、身体を震わすような体感サウンドである。爆発シーンなどでは、スクリーンの四方八方から、野太いハンマーで叩きつけるような低音が客席を襲う。ある場面では低音の風を感じたほどだ。

IMAXレーザーのスクリーン11は、エントランスと同じフロア(2階)と4階の2カ所。今回は4階からの入場となっていた。なお、スクリーン内の撮影は行なっていない
IMAXレーザーのスクリーン11は、エントランスと同じフロア(2階)と4階の2カ所。今回は4階からの入場となっていた。なお、スクリーン内の撮影は行なっていない

上映後に暗い劇場内を目を凝らしてスピーカーを確認してみると、両サイドに1基ずつ、後方左右隅に1基ずつ、天井面に左右2基ずつが配置されていた。スクリーン奥にはL/C/R+スクリーン中央上下が各1基が配置されているはずで、スクリーン全体で合計12chスピーカーが組み込まれている。スクリーン背後以外のスピーカーがすべて、天井付近にセットされているため、サラウンド音場(おんじょう)は必然的に上方に構築される。結果的に3次元的な立体音響の感覚が豊かに得られ、これこそIMAX12chサウンドの文法通りだ。

要約すると、映像も音声もよい意味で、「ビッグ」なテイストを感じた。それはIMAXがカナダ創業、北米で発展してきたラージフォーマットの映画上映システムという血統を正しく受け継いでいるとの解釈もできよう。映画の魅力を極限まで拡大しよう、そんな意思を感じるIMAXのパワーを、ここローソン・ユナイテッドシネマ札幌では強烈に感じられた。SFやアクション大作など、ビッグバジェット・ハリウッドムービーをぜひ大画面かつ大音量で味わい尽くし、日常を忘れられる「ハレの日」にフットしたスクリーン。近作でいえば「デューン 砂の惑星PART2」や「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」などがマッチするように思った。

■採点
映像8.0/音声7.5/座席8.5/総合8.0
画面の大きさが最高。映像と音声はいい意味で「ビッグ」な感覚でした

今回の鑑賞料金
1,800円(大人会員料金1,300円+IMAX料金500円)

ローソン・ユナイテッドシネマ札幌
北海道札幌市中央区北1条東4丁目1-1 サッポロファクトリー1条館 内
電話0570-78-3011(オペレータ受付10:00-19:00)

■参考サイト
ローソン・ユナイテッドシネマ札幌 ホームページ
https://www.unitedcinemas.jp/sapporo/index.html

ローソン・ユナイテッドシネマ札幌 施設案内
https://www.unitedcinemas.jp/sapporo/about_facilities.html

ローソン・ユナイテッドシネマ札幌 IMAX特設ページ
https://www.unitedcinemas.jp/imax/index.html

サッポロファクトリー ホームページ
https://sapporofactory.jp/

サッポロファクトリー フロアガイド
https://sapporofactory.jp/shop/floor


ツジキヨシのうなぎ食べ歩きコラム/札幌「うなぎ加茂川」編はこちら
https://tabelog.com/hokkaido/A0101/A010102/1005367/

筆者紹介

ツジキヨシのコラム

ツジキヨシ/1969年千葉生まれ。オーディオ専門誌の編集部を経て、オーディオビジュアル専門誌の編集に携わって四半世紀。大型スピーカーと100インチスクリーンによるドルビーアトモス対応サラウンドシステムを構築。日夜、映画と音楽に込められたクリエイターの想いを、いかに再生していくか、試行錯誤中。

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