コラム:21世紀的亜細亜電影事情 - 第18回

2016年10月28日更新

21世紀的亜細亜電影事情

第18回:インドネシア映画の今(2)警官コメディー「ワルコップ」動員記録を更新、映画館を席巻

インドネシアでこの秋、歴代観客動員記録を大幅に塗り替える大ヒット作が飛び出した。警官ナンセンス喜劇「Warkop DKI Reborn: Jangkrik Boss! Part 1(原題)」だ。国産映画として過去最大のヒットを記録した「虹の兵士たち」(原題:Laskar Pelangi、リリ・リザ監督、2008年)の約470万人を200万人以上上回り、公開から2カ月足らずで約680万人を動員。インドネシア全土に“Warkop(ワルコップ)旋風”が吹き荒れた。

「Warkop DKI Reborn: Jangkrik Boss! Part 1(原題)」のポスター
「Warkop DKI Reborn: Jangkrik Boss! Part 1(原題)」のポスター

題名の「Reborn(再生)」が示す通り、1970~80年代に人気を博した作品のリメーク。ストーリーは単純だ。首都ジャカルタを舞台に、中年のダメ警官トリオが巻き起こすトラブルが面白おかしく描かれる。上司の不倫に首を突っ込んだり、街頭デモを取り締まったつもりが自分が逮捕されたり、借金で首が回らなくなったり。3人が起こすエピソードは、ひたすら馬鹿馬鹿しく罪がない。お色気シーンもほどよく、子どもが見ても楽しめる。日本で人気だった香港の往年の大ヒット作「Mr.BOO!」シリーズに似た雰囲気だ。最後に続編を作ることをはっきり示しており、2本続けて見る人も多いだろう。

ところで、筆者が今回インドネシアに到着したのは8月初め。それから約1カ月後の9月8日に公開され、しばらく街のシネコンというシネコンは「ワルコップ」一色となった。全スクリーンが「ワルコップ」で占められ、朝から晩まで上映する映画館も。チケットカウンターは長蛇の列で、若いカップルから家族連れまで客層は幅広い。

朝から晩まで上映作品は「ワルコップ」のみ
朝から晩まで上映作品は「ワルコップ」のみ

なぜここまでヒットしたのか。調べてみるとオリジナルのシリーズはラジオ、テレビドラマ、音楽のカセットテープまで展開されていた。映画だけで70年代終わりから90年代中盤まで、計30本以上が作られたという。娯楽の少ない時代に、さまざまなメディアで社会に浸透していた。地元の女性は「インドネシア人なら誰でも知っていますよ」と懐かしそうに言った。

>> 次のページ:地元紙が分析するヒットの理由

筆者紹介

遠海安のコラム

遠海安(とおみ・あん)。全国紙記者を経てフリー。インドネシア(ジャカルタ)2年、マレーシア(クアラルンプール)2年、中国広州・香港・台湾で計3年在住。中国語・インドネシア(マレー)語・スワヒリ語・英語使い。「映画の森」主宰。

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