コラム:佐藤嘉風の観々楽々 - 第7回
2008年7月15日更新
第7回:「テネイシャスD/運命のピックをさがせ!」
音楽好きな人々は必見!“御バカ”ロック映画
ロックミュージックのロックたる所以、はたまたロックの定義、真意、目的。これらは非常に幅広く、また捉えがたいものであると思います。が、しかし、ここに、まさしくロックの中核、そして原点とも言うべき映画が登場しました。その映画とは、7月26日公開となる「テネイシャスD/運命のピックをさがせ!」。
主演は「スクール・オブ・ロック」(03)で主演を務め、一躍有名となったジャック・ブラックと、「愛しのローズマリー」(01)になどに出演しているカイル・ガス。もともとこの2人は、UCLA在学中に同じ劇団に所属しており、「テネイシャスD」とは彼ら2人が結成した実在するバンド名なのであります。監督には、主演の2人と以前からの友人でミュージシャンでもあるリアム・リンチ。非常にマルチな才能を持っていて、映像作品としては、フー・ファイターズのミュージックビデオやノー・ダウトのDVDなども手がけています。
ストーリーとしては、ロックンロールで成り上がりを目指す主演の2人が、失敗・挫折を経験する中で、ある時ビートルズ、ストーンズ、ジミヘンらも手にしたとされる「伝説のピック」の存在を知り、夢中になって探し回るというロック・アドベンチャー・ムービー。先日試写会場で観てきたのですが、とにかく全力のおバカ放浪記に、最初っから最後まで笑いっぱなしでした。この映画の「おバカ」とは崇拝されるべき「おバカ」であり、表記としては「御バカ」が正しいと思われます(笑)。劇中のJB(ジャック・ブラック)とKG(カイル・ガス)の表情、台詞、行動、全てが滑稽で、やる事なす事全てが「御バカ」。しかしながら、そうは言いつつも驚くのは、「テネイシャスD」の演奏力と歌唱力。上手すぎます! 劇中いくつも生演奏のシーンが出てきますが、どれも素晴らしいし、それ以外のBGMなども最高の仕上がりになっています。僕は意外と、大所帯の演奏よりも2人の弾き語りスタイルでの演奏がグッときましたね。アコースティックギター1本の演奏に対し、全力のロックボーカル! これがなんとも、初期のボブ・ディランを彷彿とさせ、心に響くものがありました。
この映画に対し、主演する2人の熱中ぶりや視野の狭さに、多くのロックファンは共感・爆笑・感動するでしょうし、またロックが苦手な人も納得・嘲笑し、果てはロックを愛する心を持てるようになるでしょう。
冷静沈着ばかりが良しとされるのではなく、情熱の温度変化に対し何のコンプレッサーもかけずに素直に反応出来る素晴らしさを叫び、また表現しているこの作品を、沢山の音楽好きな人々に観てもらいたいです。
また、映画の中にはロニー・ジェイムス・ディオや、元ニルヴァーナ、現フー・ファイターズのデイブ・グロールなど、豪華ミュージシャン達が意外な役所で登場するのも見所です。
筆者紹介
佐藤嘉風(さとう・よしのり)。81年生まれ。神奈川県逗子市在住のシンガーソングライター。 地元、湘南を中心として積極的にライブ活動を展開中。07年4月ミニアルバム「SUGAR」、10月フルアルバム「流々淡々」リリース。 好きな映画は「スタンド・バイ・ミー」「ニライカナイからの手紙」など。公式サイトはこちら。