コラム:師匠に会える映画館 話題の「ODS」で落語を見に行こう! - 第1回
2012年12月18日更新
「映画 立川談志」東銀座 東劇
最近の映画館で増えてきたODS上映。“ODS”とは「Other Digital Stuff」の略で「映画以外のコンテンツ」という意味。オペラや歌舞伎やバレエ、またはスポーツや音楽ライブや舞台などのエンタメを、映画館やシネコンの大きなスクリーンで楽しもうというもの。
その中でも最近、密かな人気コンテンツとなっているのが落語。すでに故人となった志ん生、文楽、圓生をはじめとする在りし日の名人たちがスクリーンによみがえるということで、若い落語ファンまでも取り込んで定期的に上映されている。そして今回は「一周忌追善プロジェクト」と題して、落語界の風雲児・立川談志が取り上げられた。
「映画 立川談志」というタイトルの通り、厳密にはODSではない。「やかん」と「芝浜」という各30分ほどの高座の間に、家元の落語や芸に対する哲学と共に、旅先などでのプライベートな映像が挿入される。ちなみに「やかん」は八五郎とご隠居による丁々発止の言葉の応酬。「芝浜」は大晦日を舞台に夫婦の情愛をしっとりと描いた人情話。好対照なテイストだが双方とも談志の十八番と言うべきネタだ。
高座を大スクリーンで見るのは初めての体験だったが、落語はまさにうってつけのコンテンツだと感じた。目線の配り方、登場人物の演じ分け、所作の数々がクリアに迫ってくる。特に「芝浜」で魚勝がみせる粋な煙管の吸い方など、ホールの離れた客席からは見ることの出来ない細やかな仕草が見られるのは、ODSならではのものだ。
テレビで知られる、過激で理屈っぽい家元しか知らない人にとっては、その落語が粋でリズム感に溢れ、また人情話ではしっかりと泣かせてくれることに驚くだろう。また、そのネタに込められた思いや背景の歴史などが、柄本明のナレーションで丁寧に説明してくれるところも、この作品ならではのものだ。
と、いいことばかりの「映画 立川談志」だが、あえて言うならファンは高座でしゃべる演者を、後ろや横など様々な角度から眺めたいのが理想。バストアップと顔だけの固定カメラでは、談志という強烈な個性を堪能するには物足りなく、「映画」と名乗るには退屈な感は否めない。(この点、WOWOWの「志の輔らくご」の見せ方は理想に近い)
なお、初日プレゼントで観客全員に配られたのは、なんと「今年」のカレンダーだったのはご愛嬌。そういえば家元も独演会でしばしば、所蔵の映画VHSの在庫一掃セールしていたっけ。
【2012年12月8日(土)より先行公開】
東 京 東劇(03-3541-2711)
※12/18(土)~12/14(金)上映時間 11:00 / 13:30 / 16:00
※12/15(土)~12/22(土)上映時間 11:00 / 13:30 / 16:00/ 18:30
(ただし、12/18(火)は18:30の回休映)
※12/23(日)以降の上映スケジュールは劇場にお問合せ下さい。
※東劇は1/4(金)まで上映予定
大 阪 なんばパークスシネマ(06-6643-3215)
【2013年1月12日(土)より全国公開】
北海道 札幌シネマフロンティア(011-209-5400)
宮 城 MOVIX利府(022-767-7400)
東 京 MOVIX昭島(042-500-5900)
神奈川 横浜ブルク13(045-222-6222)
埼 玉 MOVIXさいたま(048-600-6300)
千 葉 MOVIX柏の葉(04-7135-6900)
栃 木 MOVIX宇都宮(028-657-6200)
群 馬 MOVIX伊勢崎(0270-30-1700)
静 岡 MOVIX清水(054-355-1400)
愛 知 ミッドランドスクエアシネマ(052-527-8808)
京 都 MOVIX京都(075-254-3215)
兵 庫 MOVIXココエあまがさき(06-4960-7500)
岡 山 MOVIX倉敷(086-430-3600)
広 島 広島バルト11(082-561-0600)
福 岡 福岡中洲大洋(092-291-4058)